ホーム>ブログ>2001年1月

2001年1月

はやす組立メーカ,踊る部品メーカ,見ている装置メーカ

著者: エイム研究所 矢野 弘

いま、特に電子部品が手に入りにくく、やくざ的に入手に走っている購買担当が増えている。では本当に部品は不足しているのだろうか・・・???
 携帯電話を買いにいくとその日の内に買えるし、パソコンだってその場で買って持ち帰りできるし、エンドユーザーは誰も困っていない。町中では100m毎にある販売店に在庫の山・・・どうもおかしい???・・・引き金になっているのはITブーム先頭の携帯電話のようで2000年は4000万台売れて、2001年は6000万台売れる予想がある。

 

この増える台数を各メーカーが取り合うべく魅力ある商品開発をして、そのとき増えた分は「オレ達が取る」と、それぞれのメーカーが販売予想を立て、意気込んでコマーシャル合戦状態である。ところが、8社ぐらいある各携帯メーカーが出した販売予想の数字を加えるとメーカー数分ほどダブったところがあるので、内部の電子部品数量に直すと6000万台分ではなく2倍の1億2000万台分・・・いやもっと多くの部品数量になってしまう。6000万台を今のメーカー同士で話し合ってシェア分けするわけではないので当然ダブル。いまこの数字が部品メーカーに発注が掛かっているのである。なんと恐ろしや!!!

 

これにトバッチリを受けて他の業種メーカーも入手困難状態に陥る。さらに輪をかけて組立メーカーは部品が入手困難になると見込み、多めに発注したり、生産より早めに発注したりするため短期的に数が集中し余計に入手困難な状態に陥る。欠品が怖いので購買担当は責任を感じ、手元に部品が数カ月分あるのに、やくざ的に部品を買いあさるようになる。

 ・現金もって中国に飛ぶ
 ・部品生産ラインを期間買いする
 ・部品の材料を買って部品メーカーに作らす
 ・商社,代理店は高く売れると見込んで売り先も気にせず買いあさる。
   (あるのに今は無いという・・・手に入りにくいですわー お客さん)

 

購買担当は①早め,②多め,③広め(多重社購買) とやってしまい、これは性(サガ)のようなものかもしれない。これを半信半疑ながら数字に誘惑されて、部品メーカーの営業は工場に増産を必死にかける。2直・3直・土日出勤・派遣社員になりふりかまわず要求する。いつもはライバルであるのにコンペチタに外注したり、最後は設備の増設となる。

 さて設備メーカーは最後にお呼びがかかるのだが、半導体設備など電子部品の製造設備は受注生産で作るのにリードタイムがオモイッきり長いため、加熱が折り返し点(バブルが弾け)にきたころに設備は出来上がる。

 

その後の設備の受注は弾けているのが見えるため生産調整をかけられるのである。良いのやら悪いのやら???
じきに売れている量より作りすぎているのが分かり、製品在庫がはけるまで組立メーカーは作るのを止めるが、購入しかけた部品はどんどん入ってきて組立メーカーには雲の上より高く頂上が見えない山のようにドンと溜まるようになる。

 部品メーカーにはパタリと注文を出さなくなり部品はいっきにダブつき始める。輪をかけて、その間設計変更やモデルチェンジがあると買った部品が使えなくなる。汎用電子部品は潰しがきくがカスタムに近い部品は一等地の倉庫に、おとがめ無しで眠ることになる。購買担当はなぜか叱られない???

 

製品の在庫調整まで3カ月、部品の調整までさらに3カ月。そのため部品メーカーにはエンドの市場より6カ月遅れで再起動する。部品をつくる設備ともなれば1年遅れとなる。在庫を持てば持つほど市場と離れた工場になっていく。

 みなさん思い出してほしいことがあります。20数年前にトイレットペーパーが不足してお尻が拭けなくなるのではないかと主婦が買いあさった現象(実際には家にもスーパーにもイッパイあったけど)。早めに多めにみんなが一時的に買うと、どうなるか?

 

10年前の不動産バブル。不足しているから高く売れると不動産屋の買いあさり。でも、だれも住むのに困っていなかった。今、不良資産で倒産・合併・借金棒引き・税金投入と・・・・・いいなーぁ政府に近いところは。メーカーは自力でしかないのです。

 ようは同じ現象なんだけれども体験者が違うため、また同じ間違いをしてしまうのです。さて次に感染する業種は何なんでしょう???それは

 

コストダウンと志し

著者: エイム研究所 矢野 弘

どの企業もコストダウンの活動は必死で取り組んでいる。特に円高のころ日本人の労務費が高くなってきて流行り始めたのが労務レートの安い海外生産である。日本の20~40分の1といった魔力のようなものに引かれて、どの企業も海外生産し始めた。しかし、進出するには、いろいろなリスクがあるが、なっと言っても安いので、それも覚悟して進出していく。例えば
1. 治安の悪さ
2. 食物,衛生,医療の悪さ
3. 宗教,法律,習慣のちがい
4. 税金・手続きの身勝手さ
5. 停電,断水などのインフラ
6. 読み書き計算できない人材
7. 部品調達・出荷物流などリードタイムが長く変化に弱いなど。

 

しかしこれは日本と比較してのことなので現地の人はそこで暮らしているから当たり前の事なのだが。それにしても治安については特にひどく、私自身東南アジアで何年も仕事をしたがホテルから100mも歩くと命が危ないくらいで、仕事場所へは門の中から門の中まで車の移動となり異文化交流どころではない。住民票もまともに無く、犯罪があっても誰なのか分からない。

 ところがこのような場所でも同じように競争相手企業も進出してくる。すると安いといっても同じ土俵になってしまうため、競争としてメリットは相対的に無くなる。そして残るのはリスクのみとなる。

 

そのリスクは時間がたてば小さくなる地域もあるが日本が進出した地域は雇用が促進され収入が増え物が売れだす。消費が活発になると仕事を求めて人々が集まり税収が増え治安が良くなり、さらに人が増える。すると必ずと言っていいくらい物価は上昇していくため進出した地域の労務レートは必ず上昇する。それも日本のよりか、はるかに早く上昇する。

まさにインフレも輸出していることになってしまう。すぐに安いレートの魅力が薄れてきてしまう。そして反省もなく、より安いレートの場所・国に移そうとする。ジャングルを切り開いて山奥へ・・・いったい工場はどこへ行くのやら・・・

 

労務レートの安い所にいけば行くほど先程いったリスクは大きくなる。実際進出した出向者(マネージャ)は「これが勝負どころで、日本が安全過ぎるのであって、怖かったら出ていきゃいんだ」と根性がすわった強者がいるので成り立つ。この根性は良しとして、実はもう一つの大きな潜んだリスクが進出してから芽生え始めるのである。労務費を分解してみると
   
 労務費=工数(人の時間)×レート

 

先程までいっていたのはレートの値に着目したコストダウンの手段であって、これは財テクと同じことなのです。レートの安さに引かれて日本と比べて2~3倍の作業者がいても、最初は気になるが「安いからまっいいか!」とムダをムダとして思わなくなる。他から指摘されてもレートの安さに指摘者も濠に従ってしまう魔力があるようで、やがてその会社の文化になりムダを取る力がいつのまにかなくなってしまう。特に鈍感になってしまうのが
1. 手待ちのムダ
2. 動作・運搬のムダ
3. 設計のへたさで作りにくく手間がかかるムダ
4. 不良を作るムダ・手直しのムダ
5. 設備可動率の低さで昼夜稼動するムダ

 

本当のリスクは、このムダを容認してしまう意識的リスクのことである。いったん文化になってしまうとなかなか改善に手を着けられないし、「今さら、なにを!」と労働強化と間違われてストライキでも起こされると大変なことになる。始めたとしても、すぐに力が身につかないし、人材が育ったと思ったら辞めていくし・・・・日本でも改善文化をつくるのに数年かかるのを、ましてや海外ともなると・・・・・と嘆いても始めないと始まりは無い。

2014718161211.gif

愛妻弁当と通い箱

著者: エイム研究所 矢野 弘

私はサラリーマン時代、毎日、いや出勤の日は愛妻弁当であった。いつもかみさんは献立に悩んで、だんなが嫌いな材料も盛り込んで、いかにおいしく?、安くを目的につくっている。いつも、弁当を持っていくため、アタッシュケースを持って通勤している。アタッシュケースの中は、この弁当と作業服の着替えが主で、返りは、汚れた作業服と空の弁当箱である。

 独身のころは、出勤の途中でよくホカホカ弁当を買って行ったものである。この時の箱は発泡スチロール製で横に傾けると、中の汁がこぼれ、非常に取り扱い難く、食べると返さずにごみ箱にポイッとなる。独身のころはあまり気にしていなかったが、もったいない話である。

 

結婚して直ぐ必要になり、さっそく弁当箱を買いにいった。いろいろあったが、一度買うと、何年も持つため慎重に選ばないと、小さいと夕方には腹ぺこになるし、大きいと食いきれず残してしまい、かみさんに叱られてしまう。弁当箱の中は一杯に詰めておかないと、かたよってグチャグチャになり見た目、食べる気がしなくなる。かといって、使い捨ての折り箱や発泡スチロール品は単価は確かに安いが、長い付き合いだと高くつき、給料の数%は弁当箱に消える。

 

時々、弁当箱を会社に忘れてしまうことがあった。1つしかなかったので、次の日は弁当無しとなる。空の弁当箱を持って帰らないと、次の日にはつくってくれない。めんどくさいとはいえ、弁当を3日分持っていって、2日間はかみさんは休み、といったロット生産をしていたのでは、弁当が腐ってしまうし、大きなアタッシュケースが必要となったり、もしかすると出張で食べれない日があると、仕損となるかもしれない。

 

仕入れ先から部品を買うとき、ダンボールか通い箱かで議論する場合がよくある。今流行りの「世界最適調達化」で数字上は安く調達できても、梱包材料・作業・開梱作業・廃棄処理・詰め直しで製造への供給など、その部品を使うまでのフローで見たコストが高価になる事があります。長い目で見て検討してください。
 また通い箱化しても返却を怠ったり、通い箱を物入れに使い数が不足して納入できなかったり、汚れたままで中の部品が使えなくなったり、しっぺ返しはみなさん体験していると思います。いや!調達担当と実際に部品を扱う担当は別なので気づかないかな?・・・

 

通い箱 7カ条

1.通箱は器である
2.器を使えば品質が保たれる
3.通うことで流れができる
4.通いを多くすれば安くなる
5.通いを早くすればリードタイムが短くなる
6.かんばんを着けると情報も運べれる
7.情報を運べば物を管理(制御)できる
 毎日通うことで、信頼関係が通います。

 

得意な方法とコンピュータ

著者: エイム研究所 矢野 弘

お金の儲け方には3つのタイプがあります。1つはものづくりや御もてなし(サービス)で付加価値をつけて高く買ってもらうVALUE型で、一般に日本人が得意な方法です。2つ目が法律的・縄張り的に権利化し、例えば特許で権利化しロイヤルティをとったり、輸入の規制で通関税をとったりするCLAIM型で、欧米人が得意な方法です。告訴して損害賠償請求もこれに入ります。3つ目が株や物など安く仕入れて高く売れるタイミングや買い手を見つけて買売したり、賃金の安い地域に工場を移したりする投機的なSPECULATION型で、華僑人が得意な方法です。

 

どの方法が良いとはいえません。どの方法(手段)を選ぶかは目的が同じでもその時のトップの志し(AIM)で異なってきます。ただ共通していえることは、それぞれの型の中でないと発揮できないこと。この型の中でのいろいろな手法・手順のことを『しくみ』といいます。

 しくみとは「System」や「Structure」とは異なります。しいていえば今流行りの「ビジネスモデル」が近いのですが、ずばりではありません。ビジネスモデルといえばアメリカが最初のように聞こえますが、JITやトヨタ生産方式のことをリーン生産方式といったり、JIT+田口メソッドのことを6σ(シックスシグマ)とよんだりしています。

 

しかし、元は日本の発明品なのです。儲けを大きくするには、しくみの範囲を広くしなければいけません。これをビジネスモデル特許として権利化し使用料で儲けようとして範囲を束縛すると効き目が狭い範囲になり、使用料は得れるが肝心のしくみからくる効果が低くなってしまいます。しくみの効果を発揮させるにはやはり『オープン&ワイド』にするのが秘訣です。

 つづいて良いしくみとは何でしょう・・・。
それはシンプルなほど良いのです。しかしシンプルなものほど構築は難しいのです。

逆に言うと簡単に作れるしくみは複雑になります、と言うより「なってしまう」のです。

 

例えば、私の体験談ですが生産管理にてコンピュータによるスケジューリングを行い生産指示のシステムを構築をしました。生産順序や時間の割りつけのシステムは簡単にできます。しかし、いざ運用していくと、設備故障や設定した速度で物ができなかったり、作業者の休み・技能不足、急な注文、量の変更、不良などで計画通りにいかないのが常です。
 そこでシステム上、各種トラブルを想定したパラメータが設定できるソフトの追加が必要になります。これも簡単につくれます。

 

しかし運用は、その都度設定値のメンテナンス業務が発生し複雑になり「どうしてこんな計画になるの?」とグチが出てしまいます。さらに作ったものが市場と合わず在庫管理のシステムが必要になります。在庫管理のシステムなんて「入りと出と残」の計算なので簡単につくれます。しかしこれをスケジューリングの生産計画システムとからめて運用するとますます複雑になっていきます。

 

精度を求めようとすると、現場に詳細なデータを入力してもらうよう要求する事になる。入力や出力画面がどんどん増え、いつしか複雑なほど「高度なシステム」と自慢するようになってしまいます。ま~複雑なほうがソフトは高く売れますからハハハ!

 逆にシンプルなしくみとして「かんばん方式」があります。売れた物をだけを補充するように造ればいいのです。しかしいざ構築しようとすると同様にトラブルがあり、これを改善しないと「しくみ」はうまくまわりません。

 

簡単につくれる「しくみ」はトラブルを容認し構築してしまう傾向になりがちで、それゆえ複雑になってしまい、シンプルな「しくみ」はシンプルにするための阻害要因を潰しながら構築しないといけないため構築に労力がいるのです。

会員コラム 本当の欠品と偽物の欠品

会員限定コラムページはこちら ▶

ページ上部へ