はやす組立メーカ,踊る部品メーカ,見ている装置メーカ

著者: エイム研究所 矢野 弘

いま、特に電子部品が手に入りにくく、やくざ的に入手に走っている購買担当が増えている。では本当に部品は不足しているのだろうか・・・???
 携帯電話を買いにいくとその日の内に買えるし、パソコンだってその場で買って持ち帰りできるし、エンドユーザーは誰も困っていない。町中では100m毎にある販売店に在庫の山・・・どうもおかしい???・・・引き金になっているのはITブーム先頭の携帯電話のようで2000年は4000万台売れて、2001年は6000万台売れる予想がある。

 

この増える台数を各メーカーが取り合うべく魅力ある商品開発をして、そのとき増えた分は「オレ達が取る」と、それぞれのメーカーが販売予想を立て、意気込んでコマーシャル合戦状態である。ところが、8社ぐらいある各携帯メーカーが出した販売予想の数字を加えるとメーカー数分ほどダブったところがあるので、内部の電子部品数量に直すと6000万台分ではなく2倍の1億2000万台分・・・いやもっと多くの部品数量になってしまう。6000万台を今のメーカー同士で話し合ってシェア分けするわけではないので当然ダブル。いまこの数字が部品メーカーに発注が掛かっているのである。なんと恐ろしや!!!

 

これにトバッチリを受けて他の業種メーカーも入手困難状態に陥る。さらに輪をかけて組立メーカーは部品が入手困難になると見込み、多めに発注したり、生産より早めに発注したりするため短期的に数が集中し余計に入手困難な状態に陥る。欠品が怖いので購買担当は責任を感じ、手元に部品が数カ月分あるのに、やくざ的に部品を買いあさるようになる。

 ・現金もって中国に飛ぶ
 ・部品生産ラインを期間買いする
 ・部品の材料を買って部品メーカーに作らす
 ・商社,代理店は高く売れると見込んで売り先も気にせず買いあさる。
   (あるのに今は無いという・・・手に入りにくいですわー お客さん)

 

購買担当は①早め,②多め,③広め(多重社購買) とやってしまい、これは性(サガ)のようなものかもしれない。これを半信半疑ながら数字に誘惑されて、部品メーカーの営業は工場に増産を必死にかける。2直・3直・土日出勤・派遣社員になりふりかまわず要求する。いつもはライバルであるのにコンペチタに外注したり、最後は設備の増設となる。

 さて設備メーカーは最後にお呼びがかかるのだが、半導体設備など電子部品の製造設備は受注生産で作るのにリードタイムがオモイッきり長いため、加熱が折り返し点(バブルが弾け)にきたころに設備は出来上がる。

 

その後の設備の受注は弾けているのが見えるため生産調整をかけられるのである。良いのやら悪いのやら???
じきに売れている量より作りすぎているのが分かり、製品在庫がはけるまで組立メーカーは作るのを止めるが、購入しかけた部品はどんどん入ってきて組立メーカーには雲の上より高く頂上が見えない山のようにドンと溜まるようになる。

 部品メーカーにはパタリと注文を出さなくなり部品はいっきにダブつき始める。輪をかけて、その間設計変更やモデルチェンジがあると買った部品が使えなくなる。汎用電子部品は潰しがきくがカスタムに近い部品は一等地の倉庫に、おとがめ無しで眠ることになる。購買担当はなぜか叱られない???

 

製品の在庫調整まで3カ月、部品の調整までさらに3カ月。そのため部品メーカーにはエンドの市場より6カ月遅れで再起動する。部品をつくる設備ともなれば1年遅れとなる。在庫を持てば持つほど市場と離れた工場になっていく。

 みなさん思い出してほしいことがあります。20数年前にトイレットペーパーが不足してお尻が拭けなくなるのではないかと主婦が買いあさった現象(実際には家にもスーパーにもイッパイあったけど)。早めに多めにみんなが一時的に買うと、どうなるか?

 

10年前の不動産バブル。不足しているから高く売れると不動産屋の買いあさり。でも、だれも住むのに困っていなかった。今、不良資産で倒産・合併・借金棒引き・税金投入と・・・・・いいなーぁ政府に近いところは。メーカーは自力でしかないのです。

 ようは同じ現象なんだけれども体験者が違うため、また同じ間違いをしてしまうのです。さて次に感染する業種は何なんでしょう???それは

 

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