身近でわかる景気変化の兆し

著者: エイム研究所 矢野 弘

ITブームが弾けてパソコンはあまり売れなくなってしまった。本当にパソコンをみんな欲しくなくなったんだろうか。

 昔、企業の中にパソコンが入ってきて、仕事でどんどん使うようになってきた。そしてそれを使っているビジネスマンであるお父さんは家でも仕事ができるように、会社と同じパソコンを欲しがるようになった。大金をはたいてパソコンを買って、さあ仕事をしようとしたがなかなか家でやる気がしないし、トラぶった時に教えてくれる人もいないので、ホコリをかぶったままとなる。

 

そうこうしているうちに、買ったパソコンは古くなって 結局タンスの中に眠ることになってしまった。時は流れITブームがやってきた。これは、企業向けを対象にどんどん高性能高機能を追求したので仕事で使っている人に受けて売れたが、市場は一巡してしまい、ITブームの終結というような羽目になってしまった。

 この時、またまたお父さん方はパソコンが欲しいと言いだした。しかし、奥さんに「タンスの中にあるパソコンはどうなの」と言われると、「それはもう古いから使えないんだよ」と言い訳をても、奥さんの方はまた同じような事になるんじゃないかと、なかなか家計の中から許可が出なかった。

 

もし、買うとなるとお父さんの[小遣い費]という科目でしかなく、小遣いが目減りするなか会社と同じ20万円以上する高性能はなかなか手が出ない。しかし、最近家庭の中で以前と違ったパソコンが欲しいという現象が現れてきた。それも我が家の中で現れてきた。

 お母さんが子供のためにパソコンを買ってほしいと言い出したのである。学校で子供たち(小・中学生)がパソコンを習うようになったため、お母さんは子供のためにパソコンが欲しいと言いようになってきた。

 

しかし、いざ買おうとするとどうしてもお父さんの感覚で選んでしまうため、より高速で、より高画質で、より多機能なハードとソフトが入っているものを選ぼうとする。
すると価格が20万円以上になってしまい、とても子供のために買う値段ではない。

 今、パソコンメーカーが開発しているものは、すべてビジネスマンや大人向けのでありとても小学生向きではない。最先端のCPUやソフトである必要はない。小学生にOfficeソフトやペンティアム4などの最高速度CPUなど必要はない。

 

というよりお母さんが子供に対して期待しているのは、お父さんのようにIT音痴になってもらっては困ると思っているのである。パソコンを空気のようにとても自然に使いこなせるようになってほしいと、お母さんは願っているのである。

 Excelでマクロが組めるとか発表の資料をきれいに書くとか、ワープロで小説や報告書を書くとか、科学技術計算などをしてもらおうとはお母さんは願ってはいない。お母さんが求めているのはパソコンでメールをしたり、音楽を聞いたり、CDをコピーしたり、パソコンで漫画を書いたり、インターネットでいろいろ知りたいものを検索したりという姿を夢みているのである。

 

そうなのです、今までパソコンはお父さんの「小遣い費」という位置づけでしたが、これからのパソコンは子供の「教育費」として家計簿の中で変化を遂げているのであります。そうすると価格としては20万円前後ではとても高すぎる。

 子供の教育費となるとせいぜい5万円から10万円まである。塾や家庭教師の値段の約2~3カ月分ならばお母さんはすぐにでもOKと返事を出すでしょう。店頭にいってこの値段がついていると、直ぐに購入許可が出るでしょう。

 

それではどんなパソコンが欲しいかというと、例えばゲームができたとしてもプレイステーションのようなゲーム機らしいパソコンであると家計簿の中では娯楽費扱いになるのでお母さんは許可しません。

 かといって間違えてはならないのは教育費として考えるあまりパソコンで算数や英語の勉強ができるとか、塾や家庭教師の代わりになるようなものを入れては実際、使う子供にそっぽを向かれるでしょう。

 

使っている姿として音楽のCDをコピーしたり、メールしたり、テレビを見たり録画したりといった普段の生活でなにげなしにパソコンを使いこなしているという姿であり、それをお母さんにはIT的だと見るでしょう。

 パソコンメーカーはこのことに早く気づいて小・中学生向けに商品開発をしなければないけません。すると、これからのパソコンは入学祝いとして贈られるような位置づけになるでしょう。また、誕生日のお祝いとしての贈り物として位置づけになってくるでしょう。

 

その費用を出す人は入学祝いに勉強机(実際は物置になるが)をかわいい孫のためにおじいさんやおばあさんが買ってあげると同じような感覚でパソコンを買ってくれることになるでしょう。お母さん方の祖父母には勉強机を、お父さん方の祖父母にはパソコンといったように。

 しかし、お年寄りはなかなかお金は使いません。自分の息子や嫁に面倒を診てもらおうとするとお金を持っていないとソッポを向かれる時代になっているため苦労して貯めたお金を減らそうとしません。ましてや今、金利がとても低いため元金を減らすようなお金の使い方はしません。

 

しかし孫に対しては元金を減らしてでも買ってその笑顔みたいという気持ちはいっぱいあります。相続では子には分配されますが血が繋がっていても孫にはいきません。パソコンメーカーは早くこのことに気づいてほしい。今それができるのは多分ソウテックという会社でしょう。今のソニーや日立,富士通はできないでしょう。

 なぜならば最先端の開発しか頭にない設計者にはプライドがあり、これが邪魔をして小中学生向けに開発するようなことはやらないでしょう。技術的に最先端である必要はありません。小中学生を合わせると何百万人という市場があるし、成長ごとに欲しいものが変化するので、その変化を捕らえれば良いのです。

 

続いて、売り込み方も変えなければなりません。メインCPUは1GHz,ハードディスク60ギガ,CD-R/RWなどと表示しては、お母さんやIT音痴のお父さんにはチンプンカンプンで販売店の店員にどうゆう質問をしていいかも分かりません。

 店頭のPOPには「テレビが見れる,ビデオ録画も10時間できる,CD音楽がステレオで聴けてコピーもできる,パソコンメールや携帯ともメールできる」などなど、普段の生活の表現に言い換えて広告をしなければ寄りつきません。

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欲しい人がお金を出すとは限らない。使う人が選ぶとは限らない。欲しい人が使うとも限らない。よって商品企画と売り方を間違い易い。この先、子供の成長に従って自ら選定する能力が身についたり、自ら稼いだお金で購入するようになってくる。時とともに変化を遂げるので変化の兆し随時見つけなければならない。その変化は常に身近にある。

 そして、その法則は単純な関係(欲しい人,お金を出す人,選定する人,使う人)から別な層が現われて崩れ始め複雑になり、そして最後に使う人の層に単純化する。そして、また、異なった別な層が現われ、これを繰り返す。自ら市場を創造するならば、この法則を原則として使い変えていけば良い。

 

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