再就職(現役を離れるな)

著者: エイム研究所 矢野 弘

■ 人材市場 ■
ここ何年かリストラで早期退職優遇を受けて辞めていく人がたくさんいる。自分に自信がある人は、今の会社よりかもっと自分を活かせる会社が有るだろうとして奮起するにちがいない。すると人材市場の中には優秀な人材がいることになる。

  いろんな会社で指導しているとき、改善のために必要な人材が出てくる。そこで経営者にお願いして募集をかけることがたまにある。特に生産技術関係が多く求人広告やコネを使って募集をかけるのであるが、最近へんな傾向が出てきた。

 

募集をかけて直ぐにそれらしき人材が訪問してきて面接を受けるのではあるが、お断わりすることが多く、仮採用で雇っても1~2カ月働いて採用を控えたり、完全に再就職して勤めても、半年で直ぐに自ら辞めてしまうのである。

 

■ 大金とタダ金の麻薬 ■
早期退職で普段よりたくさん退職金をもらったり、失業して働かなくても失業手当てがもらえるために、一度にまとまった多くのお金としばらく継続的なお金が入ってくる。失業手当ては再就職するともらえなくなるので、今まで働いてきたときの払いを取り戻そうという気になる。6カ月は働かなくても十分生活できるお金がもらえるので、退職してもあせる気持ちは直ぐに湧かないのである。

 

特に働かなくてもお金がもらえる失業手当ては麻薬のようなものである。すぐに再就職ができたとしても失業手当てをタダでもらえるために本気で仕事を探そうとはしなくなる。すると、ここから技能・技術の才能部分にブランクができ始めるのである。

 多い目にもらった退職金で1年や2年は働かなくても暮らせるので、今までのあくせくした仕事人生から開放されて、しばらくノンビリしたいという気持ちから現役を離れる時間が大きくなってくる。しばらくして、お金がさびしくなると収入源を求めて再就職を考えはじめる。

 

再就職となると今までの経験を活かして同じ職種を希望するのは当然であるが、1~2年も離れていると勘が鈍っているはずであるが、当の本人には一気に衰えたのではない為に、実際に仕事をしてみないと判らない。

 再就職をしたとき、特に同じような仕事をした場合は、即戦力になり前に勤めていた以上に期待されるため、1~2年の現役離れでも雇う側から容赦なく期待がかかってくる。すでに勤めている社員との比較があるので、例え過去がどうであろうと関係はない。

 

そのため、ブランクのために勘や腕が鈍っていると、雇った側から見た場合とても仕事に対して能力のない人に見えてくる。あまりの期待に押しつぶされて、結局、自ら会社を辞めざるを得なくなることがある。私は、そんな人を何人か見てきた。

 あせってくると、前に勤めていた会社のやり方をするようになったり、「前はこうゆうのでうまくいった」などと発言するようになる。もし前が大企業であると中小企業では反発は大きい。そして孤立してしまい1人で悩むことになる。 高い給料を求めて大企業に再就職した場合でも同じで、またリストラの対象になるようではいけない。

 

■ ブランクをつくるな ■

 特に40代や50代の人は会社を辞めてブランクをつくってはならない。特に失業手当をもらおうとする気になってはならない。失業したというマイナスの気持ちが失業手当のプラスで埋めるような経験をしてはならない。

 もし、今の会社がいやで辞めたいとか、またはリストラの対象になったならば、まだ会社に勤めている間に次の会社を決めることである。人生には節目はあってもよいが切れ目をつくってはならない。一生現役を切れ目なく通すべきである。

 

もし給料が下がったとしても、決して辞めてブランクをつくらず、もっと自分の能力を今、勤めている会社で伸ばすべきである。現役の間に次の会社を探して切れ目なく現役でいるのが自分のためになるし、再就職で雇った側の会社(新しい同僚)のためにもなる。

 

■ 一流企業が求める人材 ■

 中小企業の技術者は何でも直ぐに自分でやってしまうという癖がついている。思いつけば直ぐに行動する癖のある人材である。しかし、人材市場ではなかなかこの様な人材は出てこない。それは中小企業を辞めても、これ以上自分を受け入れてくれる良い会社は無いと思っているからである。

 今、技術的な高さを求めるより変化に対応できる人材が望まれている。大企業ではなく一流企業になりたい経営者は行動力のある人材を求めるべきである。つまりこれからは中小企業の人材を採用する時代に入ってくる。

 

今までの構図は大企業から中小企業に天下りをしたり、大企業というブランドで再就職をしていたが、これからはそれが逆に不利になる。「検討します」やら「時間と予算が欲しい」とか「トップで決めてもらわないと困ります」という人材は不要である。

 これから一流企業を目指す会社は人材発掘としては、「得意技もあり、さらに何でも自ら先ずやってしまう中小企業の人材」を求めた方がよい。

 

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