派遣社員化がもたらすもの(経営者への影響)

著者: エイム研究所 矢野 弘

<雇用する経営者側> 

 最近では、以前にまして、製造現場に派遣社員が増えてきた。経営側の利点として、労務費の低減や注文量の増減に対応するために製造現場を変動化させたいという手段でかなりの会社が進めてきている。

 ひどい場合は係長か課長のみが正社員で部下の作業者は、全員が派遣社員にという職場もある。派遣社員を入れ始めたときは、試みで二三人採用して教育し正社員なみに仕事をしてもらおうともくろんだのである。最初は教育する管理監督者にとっては少人数なのでさほど負担は感じなかった。

 

しかし、安くて便利だとして、正社員と置き換えるように増加していくことになった。最近は、景気回復もあって、どの会社も採用し始めたので人員不足となってきている。やがて簡単な作業ならば日本人より外国人のほうが安いため日系人や日本語の通じない外国人を採用しはじめることになる。

 

派遣社員であると量の変化に応じて簡単に人員調整ができ、派遣本人もそれを覚悟できているため正社員の解雇ほど、もめごとは少ない。ところが、この特徴を頻繁に使うと経営者は量が減っても死に物狂いで仕事をとってくるということをしなくなる。変動費として扱えるので利益を大きく左右する事は無いだろうとして気を抜いてしまう。すると量変動のリスクを回避する便利な仕組みを確立した分、そのリスクを解決する能力が経営者として衰えてくる。

 

逆に多量の仕事や突然の仕事も、お客に頼まれれば「ノー」と言えず引き受けたり、他社に取られるのが怖いため安易に仕事を取ってきたりする「断るのを怖がる」習慣が経営者に身につきだす。

 基本的な、雇用の継続的創出につながる新たな仕事を生み出すという努力をもしなくなる。すると仕事の創造というセンスを磨くことをしなくなるため経営者としての資質,品格が衰えてくる。安易な簡易リストラは麻薬である。これは製造現場からじわじわと経営者にまで汚染されてきている。

 

とくに外国人派遣社員を主で雇わないとコスト的に合わない状態になることは、言い返せば日本という地で日本人を正社員として雇用できない経営になってしまっていることである。つまり日本で商売をする資格なくなったということである。

 中国にいけば中国の人を雇って商売,アメリカではアメリカ人を雇うのが当たり前である。現地の人を雇用するのは、その国で商売する約束手形である。

次回続きは
派遣社員化がもたらすもの(管理監督者への影響)

 

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