勘違いされているジャストインタイム(2018年10月改版)

ほとんどの人はトヨタ生産方式のジャストインタイムとは唯一究極のものづくりの考え方のように受け止められている。実際には下図のように3通りのタイミングがあり、この3通りの連携で売上アップや原価低減ができる。一つは言わずと知れた「JUST IN TIME」であり二つ目は「JUST ON TIME」そして三つ目は「JUST OUT TIME」である。

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「JUST OUT TIME」とは期待より故意に遅れることであるり、お客様の本当の要望する日より遅く納品することである。遅れといっても約束した日からの遅れではなく、待ってでもほしいので我慢して売る側の納期の状態のことをいう。

 例えばトヨタ自動車のハイブリットカーであるプリウスや高級車種のセルシオなどは半年から1年もの待ち時間が必要である。商品価値が高く、注文が殺到してメーカーの生産能力が追いつかないように見えるが、実は待たせる自体が商品としての価値を高めることになり、高く売ることができる。またものづくりとして納期を長くもらうことで、工場としては月々や日々の平準化(負荷の平均化)ができるようになる。

 

これにより末端の仕入れ先まで生産設備、人員、部品などをピークで持つ必要がなくなり、資金繰りが良くなる。また一定のタクトタイムで造れるようになるので作業教育もしやすく、さらに改善したことが長続きして効果が持続するため大きな原価低減ができるようになる。

 

車格が低いカローラですら1カ月以上待たされるので、お客様から見るとまるっきりジャストインタイムではない。ジャストインタイムのトヨタというイメージからすると、ほど遠いのであるが、なぜかしら商品の魅力があるため、デートのときに好きな彼女を待つように、待つのも楽しみとして創られてしまう。高慢にはなるが、お客様に待たせてでも高く買っていただく商品を出し続けることができれば、お客様に対してはジャストインタイムは必要ない。

 

次に時間的に究極の姿とは、本当に調度である「JUST ON TIME」である。まさしく今ほしい時に調度、手に入ることで±1秒も早過ぎも遅れも無い状態である。製品在庫も無く、部品の在庫もなく、さらに欠品も無く物を造り続ける姿である。不可能と思えるかもしれないが、言葉としては存在する。とてもわがままといっていい。

 この状態に近いのが自動車の組立てラインが行おうとしていることである。つまり、ジャストアウトタイムでお客様を待たせ、車の組立てを自分の都合がいいように平準化して生産計画を立ててつくる状態がこれに近い。計画のオンタイムで投入している姿といえる。

 

しかし、ジャストオンタイムが100点とするとその時間的場所は一点しかないため、少しでも過ぎると遅れとなり0点になる。つまり100点と0点は背中合わせに有り同じ位置であるから、この境目を行ったり来たりしているようになる。

 維持するにはトラブルが起きても実績に応じて計画を頻繁に修正することでつねにジャストオンタイムとなる。注文の過負荷に関係なく能力以上の注文が来てもお構いなしでマイペースで生産する、つまり平準化、とりわけ負荷の平均化をすることがジャストオンタイムの状態となる。

 

平準化という生産調整はお客様とのジャストインタイムからすると反対のことをしていることになる。別の言い方をすると平準化するのは市場の変化に直接左右されないでものづくりをすることといえる。いつ何を購入してくれるか分からない変化のある市場と一端縁を切ることで次に述べるジャストインタイムが原価低減活動に役立つ。

 

平準化されていると、部品や材料を供給する前工程や部品メーカーは同様な平準化の波の穏健に預かることができる。つまり、品番や量が平均化され一定のピッチ(タクトタイム)で注文がくることになる。部品メーカーもピークで人、設備や材料を持つ必要がないため、さらに繰り返しの注文になりやすいので先が読めて、原価低減改善活動がしやすくなる。

 

そのかわり、部品メーカーに対してきるだけ自社の部品在庫を少なくするようにジャストインタイムを要求する。ほんとうは部品在庫がゼロになるようにジャストオンタイムを要求したいところだが、欠品で自分自身のジャストオンタイムが実現しないと困るので、少し早いのは良しとしたジャストインタイムを要求するのである。

 要求する程度としては、少しトラブルがあると在庫がゼロになるか欠品しても挽回できるくらいのジャストインタイムである。ジャストオンタイムが完璧主義の100点とすると、ジャストインタイムは現実ベスト主義の80点といえる。

 

8:2の原則で20%の努力で80点の効果をだす効率的な原価低減活動が行えるようになる。これを完璧主義の100点を狙う原価低減活動とすると残り80%の努力や投資をしないといけない。行なったとしても効果は残り20点分しか取れず、投資のわりに効果が少なく、20点部分の投資効果としては原価低減どころか原価アップとなる。

 

ジャストインタイムの追求とはジャストオンタイムではなく、あくまでも設備・資材・人・土地建物といったインフラなど投資の抑制や原価低減の活動手段の一つとして受け止めることができる。効率的な原価低減活動をしようとすると、お客様に対して商品やサービスの魅力をあげて待たせて、さらに高く買って頂くジャストアウトタイムと、最終工程での平準化したジャストオンタイムの生産、そして前工程や部品メーカーに対してのジャストインタイムの要求をすることである。

ジャストアウトタイムで売上を上げ、ジャストオンタイムで最小の投資で回転させ、ジャストインタイムで原価低減をおこなうことで収益を3倍以上に上げるのである。もし、商品や製品の魅力が無く売れないもので、他社にも同じような製品があるとしたならば値引き合戦になり、さらに今日中に1万個もってこいなどと無茶苦茶な納期を要求されるようになる。

 このような境遇では平準化どころではない。もしこの境遇ならばリードタイムを極端に短縮し、小さな利でも回転を速くすることで収益を積み重ねることである。ジャストインタイムを極端に意識する必要はない。リードタイム×回転 イズ マネーである。

注文すれば直ぐ出てくるファストフードがそうである。

大変な状態であるが、この状態から平準化を創り出す経営の考え方がある。そして、その経営を実現させるためにはリードタイムという4つ目の時間を経営の柱にしていく。リードタイム経営

 

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