保全マンの育成

著者: エイム研究所 矢野 弘

経験を積むには故障を多く体験しないといけない。かといって多く故障してもらっては困る。保全のマニュアルを作ろうにも実績がなければならないため、これも、あらゆる故障が起きてくれないと、いいマニュアルはつくれない。

 矛盾する話であるがいたしかたない。そこで設備を導入するときには出来上がった状態で導入するのではなく、生産技術者と扱う担当者とで、その設備の組立てと量産までデバッグと設置まで体験することで多くの知識や技能を得る事ができる。

 

購入する設備はメーカーとの関係があるため実施するのが困難であるかもしれないが内製設備に関しては可能である。始めからいたらない部分もあるかもしれないが改善・改良を重ねていくうえでも効果がある。

 量産に移ってからの製造への引き継が慣例であるが、保全の知識、技能、技術が無いままに量産段階で故障すると被害はとても大きくなりやすい。未熟であると修理で逆に壊す事も有り新品設備をお釈迦にする事もある。

 

故障もしないのに、「もしここが故障した場合は、こうする」とか知識だけを教えても直ぐに忘れてしまうし、的確な修理はできない。人が本当に覚えるときは故障しないと覚えないのである。故障して初めて分解の方法を習得する事ができるし、分解しながら原因を探したり、メカニズムの原理原則を知ることができる。

 保全マンを育成するには、故障して生産に支障をきたし緊張感のある状態で体得するのが最も速い育成方法である。設備設計者も万能ではない。場数を多くやってみないと分からないトラブルも多くある。耐久性など特に数多くやってみないとわからない。

 

どんなところを定期的に交換したり、清掃したりしなければならないかは実際に使ってみないと分からないし、周期も故障から学ぶ事になる。それを事前に調べて定期や定量交換しても、それが正しいかどうかは故障してみないと証明でいない。

 故障は無い方がよいが、無い人は育たない。故障個所を探したり、原因を見つけたり修理して調子よく可動すると、なんとも心地よい快感におちいる。ただし、再発すると自分の腕の無さを感じるが・・・。

 

人に教える時も、目の前で手早く原因を見つけ修理すると自慢になることもあるが、共に頭をもたれて原因を見つけ修理した体験を経験すると、なぜかしら人間関係とやらが良くなる。

 もしかしたら、保全マンとは消防士や刑事のような存在かもしれない。

 

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