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2005年12月

2007年問題をぶっ飛ばせ 技術技能の伝承 管楽器

著者: エイム研究所 矢野 弘

「後工程は指導員。一個流しのジャストインタイムで伝承」

背景

 現場の団塊世代に頼った構造から抜け出すために技能技術の伝承も行わなければならないが、楽器に対してのお客様の要求レベルが年々上がってきて、ものづくりのレベルも同時に上げていかなければならない。

 

<先輩(51才,経歴30年以上)>

●仕事を始めたきっかけと当時の教えてもらい方

入社して配属されて以来ずっとトランペットなどの管楽器のハンダ付け工程で、なぜ自分がここに選ばれたのか分からない。当時の教えられ方は基準書とかなく、最初は練習用の部材でハンダの流れ方からキズヘコミの修正もやり5日くらい実習した。実際に製品のハンダ付けをしたのは2カ月後ぐらいである。

 

最初にハンダ付けをした時に周囲に回すとくっつくもんだと思っていたが、中まで染み込むものだとは思わなかった。初めての製品は先輩からだめだといわれ、やり直しの繰り返しであった。3~4日教わったが、その後は他の人はどうやっているかを見て自分で覚えた。歩いているときにのぞいて見たり、教えてもらうより当時は真似る盗むであった。今でもずっとそうしている。自分の腕を上げるのに終わりはない。

 

● 任された時期はいつですか。

2年ぐらいたって慣れたころに先輩から思い切りゴツンと拳骨をもらった。慣れから手を抜いていたのでしょうね。それ以来いいのをつくろうと品質に対する思いが強くなった。

 

最初から最後まで一人でやってくれと言われたのは10~15年後ぐらいである。それまでは任されたとは思わなかった。「良いも悪いも自分次第だ」と思ったときに任されたと思った。五感の中ではすぐれた目と手が必要で、ハンダの送りやバーナーの握り揺れ具合でどうやったらうまくいくか、工夫は今でも続いている。一個一個ちがい、季節や気温によってもハンダの乗りが異なるので全く同じ方法ではできない。しかしどうやったら同じものができるか毎日毎日考えている。ハンダ付けは難しい、30年たっても難しい。今でも勉強しないといけないと思っている。

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<後輩25才経歴3年>

●仕事を始めたきっかけと当時の教えてもらい方

この職場に入る前はヤマハ発動機で2年間出向していて、20代前半だったので若さで配属されたと思う。釣りの仕掛けづくりが好きで手先は器用だと思います。教えてもらい方は指導員の方の作業を何回か見て、自分がやるときはいきなり製品だったのでこんな素人が製品をつくっていいのかなとためらったことがあった。もちろん製品は指導員の方がチェックするのですがハンダを多めに付けることが多かった。

 

●教えられていた期間と任されたという時期は

ラインの作業で教えてもらったのは最初の3カ月くらいである。技能伝承活動を全社的にしていて、月2回で1年間仕事が終わった後にやった。一通りの工程を任されたのは3~4カ月後ぐらい。このハンダ付け作業は当時勘コツが多く特に接合部の隙間がばらつきグラグラしたりハンダの染み込ませに大変で思うようにできなかった。提案活動をやってる中でだれでもできるようにジグを考案しバラツキを抑え勘コツの度合いがとても和らいだ。このアイデアはやっている人にしか気がつかない。

 

隣にいる先輩には何をやってもかなわないです。すべてにおいてハンダ付けは先輩に聞けばわかる。自分の後工程なので僕がつくった直ぐ後で先輩が見て感じるところがあれば教えてくれる。先生が後工程にいることはありがたいし心強い。とてもいい刺激になる。

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2007年問題と技術技能の伝承

著者: エイム研究所 矢野 弘

2007年問題=技術技能の伝承問題として団塊の世代の話題がでてくるが、すでに現役を離れて伝承は終わっている会社がほとんどである。どちらかというと時代に関係なく後継者の育成問題である。日本の人口比率を見ると確かにピラミッド型ではなく、くびれた部分と少子化はでてきている。
 昔と同じ状態に復元しようとすると問題かもしれないが、生まれたときには景気が良くて多く生まれ、就職する段階になると不景気で就職難、さらに定年退職するときは景気が良くて人材不足で辞めないでくれと状況が変わり、人材の需要と供給のズレは出てきて当然である。

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いつの時代も技能技術の伝承に苦労するが後継者不足ではなく欠如になった原因は人口構成ではなく

 

・派遣社員の増加と継続(正社員は定年で辞めていき、入るのは派遣社員)
・外注委託しつづける(技能技術も委託し社内の高スキル者は定年で辞めていく)
・多量採用してその後採用を控える(売れる量が徐々に減ってきた)
・売れ続ける製品(モデルチェンジもなく技術者育成を怠る)
・給料の高い人(高いスキル)の首切りで教える人の不足
・技術の切り換え(プログラミング言語の変化、古い技術に誰も振り向かない)
・技術の硬直(変えてはいけない聖域をつくる。社内規格化)
・製品とともに細る技術技能(そろばん製造,伝統工芸品化)など

 

ものづくりのコンサルタントをしていると、このような経営者の舵取りミスに対面する。

今の利益のみを考えると、どれも経費節減としては魅力があるが麻薬のようなものでやり続けると全体をじわりじわりと蝕むようになる。

一度はどの企業も体験していて痛い目にあっていると思う。早めに気づけば麻疹のようなもので免疫が出来てくる。

今後のコラムには免疫が出来た会社や免疫をつくっている会社を取材してきましたので紹介します。普段は情熱的に仕事をしているので真剣な表情だが、2007年問題をぶっ飛ばしているみなさんの笑顔を見てください

 

 

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