2007年問題をぶっ飛ばせ 旋盤

著者: エイム研究所 矢野 弘

背景

バルブや軸の漏れ止め継ぎ手を生産している会社で、旋盤加工工程を外注に依存してきたが外注先の高齢化と跡継ぎ不足で3年後には半分以下になる環境にある。そこで内製化を進めなければならず人材の育成に力を入れだした。

「その技の背景を伝えるには教えられる側が興味を持って努力しないと伝わらない」

 

<先輩(44才で経歴27年)の話し>

●仕事のきっかけと当時の教えてもらい方

父親が旋盤工で小さいときから見て面白い仕事だなと興味を持ち専門学校に行きこの会社に入った。会社に入って単純そうな加工から入り、「刃物はこのように研ぐんだよ」「こういうものはこういうふうに削るんだよ」と少しずつ簡単なものから教えてもらった。

 

直接、仕事から入り図面を与えられて丁寧に教えてもらった。専門学校を出ているからという扱いであったが学校で習ったことは操作方法だけでどのように加工していくかの発想は他の人がしていることを見て技術を盗んだ。

自分でノートでネタ帳をつくっていった。自分の仕事だけでなく他の人の技術も蓄えるようにしていった。何でこんなことをしているのかを考えるだけで自分の仕事に結びつくものは多くある。今でも新しいことはメモしたりしている。

 

●始めての仕事での印象は

簡単なことからやったので1週間くらいからできた。当時は単純なものであったが指示されたようにできたのでとても嬉しかった。不具合が出たときは怒られるが不具合が出ることで気がつくことが多かった。

 

●教えてもらっていると感じた期間と任されたと感じた時期は

自分一人でやっている気持ちでいたが、3年ぐらいはいろんな事を教えてもらっていた。はじめは型にはめられてやらされていたのが、1年後に好きなようにしろと野放しにされて「早くしろ」と言われはじめた。矛盾するがその2年間がいろいろ考えさせられた期間であった。

同じことをやっていても自分の工夫が入ってくるようになったのが3年目からである。マシニングセンターを使って加工しないと先輩からムリだといわれたが旋盤で加工を「一度やらしてほしい!」と自分なりにジグを考えてできたのがとてもうれしかった。

 

●腕を上げるのに大切なことはなんですか

工夫する部分は当然刃物やプログラムもありますが一番は「考え方」だと思います。考え方自体をいろいろ工夫し自分の枠から外れることで、ひらめきが形になっていく。目に見えるものを真似たり、先輩が工夫したジグを使うのはたやすい。しかし、なぜそうなったのかの背景は見ても分からない。昔の職人さんが出しているのは技術の一部にすぎない。その技の背景を伝えるには教わる側が興味を持って努力しないと伝わらないと思う。努力というより探っていかないと伝わらないと思う。

 

教えて頂いたことは1週間で達成できたが、その人が言ってくれる背景を得るには教える側ではなく受け取る側にある気がする。探ることで身につく技術がある。そうすると図面を一瞬見ただけで「ピン」とくるものが出てくるようになる。このようになるのも大切であるが、10~20分間図面をボーとして見る。するといつもの方法ではなく別の考え方が浮かんでくる。その20分間は将来の100時間以上の効率につながる。部下にもそう教えている。

 

新しい図面でもいつもと同じパターンにはめる「ピン」とくる技能も上げる必要もあるが、時間をかけて異なった考え方でやってみることも大切。つまり同じことをしてはあかんし改善は当たり前という気持ちで取り組んでいるし教えもする。

旋盤

<後輩(25才で経験3+4年)の話し>

● 仕事のきっかけと当時の教えてもらい方

この仕事を始めたきっかけは親がやっていたからです。私も物心がついたときから今の仕事が目の前にありました。今でも親はやっています。前の会社で3年でこの会社に来て4年間この仕事をやっています。前の最初の3年間は基本的な使い方を教えてもらい、分からないところを聞いたり見たりして、簡単な製品から実技で教えてもらった。

 

始めは教えてもらった通りやってみたが、削る回転数を変えたりやり方を変えてみたり工夫し、結果的には先輩と同じようになるかもしれないがいつも異なったやり方を考えたりやっています。

それぞれの旋盤を隣に置いて師弟関係で修行中である。いつも弟子である森脇さんは先輩のやり方をのぞいては学んでいます。山際さん「変わったことをしていると、よくのぞきに来ます」、森脇さん「とにかく知りたい」

旋盤

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