ムダと景気

著者: エイム研究所 矢野 弘

ほとんどの会社は最初は小さな中小企業でありオーナー会社であった。ある人は、成功している大きな会社を目指して「大きいことは、いいことだ」という時代に乗っかり、どんどん会社を大きくしていった。
 全体の市場が大きくなっている間は、さほどムダがあっても気にならないが、会社が大きくなるにつれてムダも一緒に大きくなっていく。しかし、今日のように少しでも市場が小さくなったり、廃れてくる分野があると、大きくなったムダは顔を出してくる。

 

次第に売り上げが落ちてくると、ますますムダが大きく見えてくる。しかし、そのムダを取ること自体を労働強化と思っている経営者がいる。これは大企業の経営者に多い。
 「ムダがあった方が、ゆとりがあって居心地がいいじゃないか」と大きな社長室で、デンと座って構えている。この社長室に部下を呼びつけたり、資料を作らせたり、コンピューターネットワークを構築して社長室から、あたかも全てが見られるようにしようとする。ムダを認めたままムダをネットワーク化するのである。

 

それでも、分からなければ関係部署の役員や部長を集めて会議を開こうとする。情報収集というより情報収拾(コレクション)になり、やがて趣味となってくる。あたかもピラミッドの頂点にいるつもりで会社を見ている。(ピラミッドの頂点には王はいないが・・・)
 大企業に就職してトップに昇りたく、頑張った人は、ようやく登った頂上に入社以来若いころ夢を抱いていた大企業のトップの姿で居すわりたいのである。その気持ちは理解できるが、時代(変化)がそれを許さない。

 

景気にかかわらず、経営者の中にはハタと気がついて大企業ではなく一流企業を目指そうとしている人達もいる。大きさではなく質でもなく異なりを求めるのである。脂肪太りの大きな企業ではなく、また、筋肉質のパワフルな企業でもない。
 ようは何かひとつ秀でた企業を目指そうとしているのである。この本は大企業や中小企業の経営者に対して一流企業になるための志しを記したものである。

 

経営者から営業,技術,生技,製造,購買,品質保証,サービス,物流など大企業では一通り備わっている機能の部署の方々に、ぜひこの本を読んで頂きたい。また、今からその組織の機能をつくろうとする経営者に読んで頂きたい。
 どんな会社にも、いろいろなムダがある。経営者のみならず、このムダを常に見つけて取り、または発生しないような体質づくりをしなければならない。ムダはムダを生んでいく。特に大企業ほど栄養が高いので大きなムダが生まれて育っていく。

 

ムダの原因はいろいろな場所で発生するが、すべてのムダは会議室ではなく現場に集まってくる。自分の行っている仕事は付加価値があると思っていても、その仕事は後工程から見るとムダの種と栄養になっている場合もある。

 

大企業は大きくなるために、どんどんお金を使い固定資産を増やし、人員を増やし、筋肉もつくかもしれないが脂肪もついてくる。一流企業は景気に関係なく常に市場を見て、集中してお金や人材を投資し、狙った分野で、または商品で「最初」を目指そうとする。
常に競争相手の企業ではなく、潜在的なお客さんを見ながら「初を発しよう」としている。初めてなので当然最初から一番である。一流企業になろうとしている経営者は初番になるためには何をしたらいいかという課題を、常に持ち続けている。

 

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