初めが肝心 新人教育は「3S5T」から(その2)

著者: エイム研究所 矢野 弘

日本人らしい記憶主義
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覚えなくても、聞かなくても、言わなくても、見て分かるルール
学校教育は今も記憶力を鍛える方法です。記憶力が良いことが勉強ができる人となっています。
そのまま社会に出ると「もの覚えが良い人=仕事ができる」になっている偏重があります。

●日本とアメリカの交通ルール表示の違い

 

この写真は交差点付近での路上駐車です。角の銀行に用事があるらしいが、とんでもないところに止めています。みなさん、交差点は駐車も停車も禁止なのは知っているはずです。

でも交差点のどこまでが禁止なのか知っていますか。確か5m以内は禁止のルールのはずです。しかし、どこから5mなのか知っていますか。

交差点の中心? 幅の広い道路だと5mはまだ交差点内です。ならば角から? 円弧の大きい交差点ならば、これも交差点内です。円弧の始まるところから? どうもハッキリしません。免許の更新の時に教官に尋ねたところ、ハッキリと決まっていないとのこと。

でも、試験には出ます。覚えて回答はできます。でも実際に運転をしてみると、ルールを守っているのか違反なのか見ても分かりません。さらに、免許を持っていない人は全く知らないと思います。

hyousiki 今度の写真はアメリカに住んでいた時に車に乗って気づいたことです。交差点に赤いペンキで、ここまでは駐停車禁止と塗ってあり、書いてもいました。見て分かるルールです。
免許を取っていない人でも分かるようになっています。さすが多民族国家です。

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覚えなくても、聞かなくても、言わなくても、見て分かるルール
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学校教育は今も記憶力を鍛える方法です。記憶力が良いことが勉強ができる人となっています。そのまま社会に出ると「もの覚えが良い人=仕事ができる」になっている偏重があります。

教育するとき、覚えが悪いと批判するのではなく、覚えてもらうことに頼って、教える側の工夫が足りないと反省すべきです。

記憶に頼ると、覚えていなければできないし、間違って覚えるとミスになり、思い出しながら仕事をすると効率も悪くなる。

そこで、言葉を全く使わないで、先ほどの用事ができるようにするためには、どうすればよいでしょうか?

見てわかるもの

これは、トヨタ生産方式の中のかんばん方式と言います。かんばん方式が生まれた背景は、人が効率よく働けるようにするためで、誰でも見て分かるように表示を始めたことから発展したものです。

最初は場所を探すムダが無いように工程表示をしていきました。街でお店の名前が道路から遠くても、よく見えるように表示してあるのと同じです。また、目的の場所に行くと間違って物を取らないように現品にも物の表示をしていきました。さらに仕事を頼む時に、何をどの順番でするか分かるようにカードを渡しました。

また事が終わったかどうか確認できるように、渡したカードを現品票として現物に貼り付けできるようにしました。これが、かんばん方式の生い立ちです。
最初は看板方式でしたが、現品票や生産指示に使うことから看板という漢字では意味が固定になるので、ひらがな表示になりました。には

改善を通じて教育をしていきましょう
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新人が入ってくる前に、このような改善が済んでいると教育もスムーズなのですが、あまりにも知り過ぎている先輩は、何が分からないのかが分かりません。

そこで新人を教育している時に「分からないこと、知らないこと」を聞いて、新人と一緒に表示や指示書の様式の改善をしていくとよいでしょう。

 

●表示改善を始めてみて分かる整理整頓の必要性

物が乱雑に置かれたり、書類も積み上げて区分もせずに置かれたり、不要な物が残っていると、場所も表示内容も決められません。整理整頓が先になります。

また、物や場所の名称も、人や場合によって言い回しが異なると、何と呼べばよいか決められません。名称の標準化もしなければなりません。これも日本特有の文化で、同じものをいろいろな表現をします。

例えば、自分自身のことを「私、おれ、僕、わし、わて、あたい、おいら、自分」など、こんなにあるのは日本だけです。「この表現はやめよう」など、言葉の整理整頓も必要です。

さらにつづく

言葉

 

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