初めが肝心 新人教育は「3S5T」から(その3)

著者: エイム研究所 矢野 弘

新基礎

1 整理してみましょう

「要る物」「要らない物」に分け、「要らない物を処分する」ことです。処分にもいろいろあり、捨てる、再利用、売却、とりあえず保管とあります。特に「捨てる」が価値観を最も明確にするので、新人と一緒に「捨てる」を実行してください。

「物になる前はお金だった、これはお金を捨てることと同じだ」とつぶやきながら行動することで価値観の共有ができます。また、先輩の机の上や中から、先輩として不要になったものでも新人から見ると、今から必要になる物があります。職場全員の物を整理すると、かなりの量の文房具や備品が新人用に購入する必要がないくらい出てきます。

 

2 整頓してみましょう

誰でも、必要な物を、必要な時に、必要なだけ、必要な場所で、すぐに取り出して、しまえることができるようにすることを言います。
新人と一緒に、今、なんとなく決めている作業手順で行ったり来たりのムダがないか、物を探す行為をしていないかを見つけながら、必要なものがすぐ使えるような配置(レイアウト)・置き場所・置き方を決めましょう。すると、今まで行っていた先輩より、新人の方が速く的確にできるようになるかもしれません。

 

3 清掃をしてみましょう

機械・型・治工具などに付着する、ごみ、汚れや切粉などの異物を除去しながら、稼動部の磨耗、空・油圧系、電気制御系など、設備の「潜在欠陥を探し出し(点検)処理する」ことが清掃です。

新人と一緒に機械の一つ一つの部品を分解して、手で感触を確かめながら診て、重たい部分も一緒に持ち上げて、作業服が油汚れになりながら清掃してみましょう。自分自身が汚れる代わりに機械がきれいになっていく姿を感じます。
悪いところが見つかれば「このままにしておくと、こんな故障をするぞ。危険だし修理に3日もかかるかもしれない」など、感覚を共にしながら教えられることが多くあります。  
清掃後に注油して機械を運転してみると、音色がスムーズに変わり、手を施した達成感を味わえます。手をかけた機械は普段でも気になり、何となく立ち寄って触って調子をみたくなります。

 

整頓を具体的に行う方法が、定路・定位置・定表示・定量・定色です。今日、入社した新人でも言葉を使わずに、指示した物をすぐに取り出せて、戻せるような仕組みをつくりましょう。

これは仕事を進める上で情報や物の流れが分かるようにする標準化です。また管理・監督者が異常か正常かが一発で認識できる仕組みでもあります。

ミス防止

1. 定路(通路をつくってみましょう)

適当に家を建てた後から、空いたところや最初に誰かが通ったところを道にすると、とても生活には不便で渋滞が起きたり、見通しも悪く事故も起きやすい道になります。仕事も住むのも教育にも、良い町を創るときは、まずは交通が良いように道路をつくります。

職場で通路となっているところや、物がはみ出ているところを見つけて、レイアウトを変更しながら新人と一緒に通路線を引いてみましょう。職場がシャキッとします。

 

2. 定位置(物の位置を定めてみましょう)

通路が決まると、道から必要な物を取りやすく、戻しやすい位置を決めます。すると、道からの出入り口が決まります。

いつも使う物は「使う場所で」「使う姿で」置く。使う姿で置くと、戻しやすさもよくなるので位置が乱れにくくなります。特に新人に任せる仕事の道具は、作業に合った場所を一緒に決めていきましょう。新人に「元に戻せ!」と、しからなくても戻ります。

 

3. 定表示(物や場所の表示をしてみましょう)

決めた場所が“ここはどこか”、そして物のところには“これは何か”の表示をする。特に通路から見て分かるように表示をする。

ほとんどの会社は工程、場所、物の名前が人によって異なることが多い。標準化をして言葉で話す時もマニュアルで書く時も、実際に物に表示する時も共通にすることです。新人は多言語に最も苦労します。

 

4. 定量(最大と最小の量を定めてみましょう)

物の保管は個人管理が多い。心配で余分に引き出しに隠しておくことがあるので、まず定位置と定表示で物を個人保管から外に出してみます。

量は購入リードタイムで決まるのですが、勘で最大と最小の量を決めて表示をします。整理整頓が乱れる原因の一つが、買い過ぎて置ききれなくなり、適当なチョイ置きから始まります。

 

5. 定色 ( 色に意味を定めて塗っていきましょう)

最後に色を使って判断を正確にスピーディにしていく。通路は黄色線、物の置き場所は白い枠線、不用品置き場は赤い枠線、黄色と黒の縞模様は進入禁止など、遠くからでもすぐに見て分かるように表示をします。

このように決めていくと、言葉というコミュニケーション手段を使わなくても、覚えなくても、新人がすぐに、いやベテランも今までより効率良く、ミス無しで仕事ができるようになります。

 

 

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