異常時のリーダーシップ(3/4)復旧のリーダーシップ

著者: エイム研究所 矢野 弘

今回の地震にも遭遇し、阪神大震災を思い出してしまいました。地震で家が崩壊し助けを求める声が聞こえる。人がそこにいることは分かっている。火がみるみる回って来る。道路には消化ホースがたくさん伸びてきている。しかし水は出ない。

フォークリフトか重機があれば崩れた建物を持ち上げて助けられるのにと、目まぐるしくいろいろな思いがわく。道路もふさがり、今、助ける道具は自分の手足しかない。声を掛けようにも何を言っていいのか、ただ周りを巡るだけで時間が過ぎる。

空はオレンジ色になり焼けたススで黒い雨が降って来る。寒い季節なのに寒さを感じない。死んでいく人、生きていく人が今、目の前で分かれていく。現実を受け入れるにつれて不安が大きくなる。会社が被災し収入が途絶える不安。再び仕事ができるのだろうか。悲しんでいる気持ちより生きていくことの不安の方が大きくなる。

 

● 会社を早く復旧させて元の生活に戻りたい

会社は設備や物があっても、お金がなくなれば倒産である。早く復旧して事業を再開しないと収入の道が途絶える。復旧の速さはその指揮をとるリーダーの手腕にかかってくるが、優れたリーダーが生まれるための、それまでの条件がある。


ある会社で実際にあったことだが、日ごろの生産が大ロット生産で在庫を多く持っていた会社では、「在庫がいっぱいあるから、しばらく生産が止まってもいいや。どうせ電車もバスも動いてないし、今日一日は家でのんびり鍋を楽しもう」をした人が多くいた。

1週間たっても復旧活動もせず指示待ちであった。これとは逆に「日ごろから在庫は諸悪の根源」とばかりに在庫を持たなかった会社は、お客さまに迷惑が掛かると、必死になってすぐに復旧し始めた。日ごろのものづくりで、こうも異なるものかと。

 

● 異常時のリーダーシップ

異常時に何かを決めようとする場合、やってはならないことがある。それは多数決で決めることである。政治家のように選挙で代表が選ばれて、会議の多数決で事を決めるような民主主義的なやり方をしてはならない。

会社の昇進は多数決で決めるわけではないので民主主義はないといっていい。多数決ではリーダーの精神は生まれない。ただ単に議事を進める議長しか生まれない。リーダーは「決める責任と命令責任」を持てる者がなる。

 

● 的確に命令する体制づくり

元に戻す復旧作業では設備が目立って気に掛かるが、ものづくりの基本の4M(設備、物、標準、人員)を明確にする。下図のように工程順に主要な設備など4Mを横軸に、縦軸にはライン名または建屋と代表製品名を記入して表をつくる。

この表で、どこまで復旧したのかが見て分かるようにする。丸を4等分して進捗を5段階でチェックして塗りつぶす。丸の中には実施予定と担当も書く。

復旧の進捗納期の記入

 

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