稼働率(1/2)

著者: エイム研究所 矢野 弘

よく聞かれる質問で「稼働率」についての定義や計算式を問われる。生産性や能率と同じように現場の指標として使っているのですが、どうもしっくりこないことが多いようです。グラフで掲示すると上がったり下がったりして、下がると叱られるネタになっている。右肩上がりにしたいようで、なかなか上がらないと、良くなるように定義を変えようとする。
すると議論が白熱して「訳が分からない」「ごまかしている」と見られて、
だんだんと使えない指標になっていく。

 

● 問われた時に、こんな例え話をします

あなたは車を持っていますか? 稼働率はいくらですか?せいぜい一日に通勤や買い物で2時間程度しか乗らないでしょう。すると稼働率は10%程度です。では、低いからといって、わざわざ用事をつくって一日中、乗り回しますか?
いいえ乗り回しません。設備は必要な分だけ稼動すればよいのです。車がもったいないと思ったならばバスやタクシーにして、車を手放してください。いやですね。設備とはそのような物です。

 

● 稼働率の定義(稼ぎにつながった働き)

生産現場としては、生産性や設備を上手に使っているかを見たいため、それを表す指標が欲しい。そこで、似た言葉で「可動率」がある。読み方は同じ「かどうりつ」ですが区別するため「べき4 4どうりつ」と言うようにしている。
では稼働率では役に立たないかというとそうではない。これも役立つ指標なので使い方を分けて活用する。

・稼働率(かどうりつ)
必要な(売れに結びついた)生産量を加工する
のに、その設備能力でフル操業した時の、定時能
力に対する需要の割合をいう。売れ行きによって、
稼働率は決まるものである。
注文が無ければ0%で多過ぎると200%もありうる。

・可動率(べ・き・どうりつ)
設備を運転したい時に、正常に動いてくれる状態
の確率である。設備とその保全によってもたらされ
る信頼性に相当する。これは常に100%

 

一般的な稼働率の定義は、運転した時間から故障など止まった時間を引いた割合になる。この定義を生産現場で使うと、不要な物まで止めずに生産し続けて稼動時間を増やし、数値を良くする操作をするようになる。

生産は材料や人、設備、エネルギーなど多くの経営資源を使うので経営の損益に直結する。そのため、稼働率が低いからといって、ただ単に数値を良く見せるために、生産し続けることは経営にとって、悪いことをしていることになる。これを防ぐために、一般の定義とは異なる定義にしないと危険なので、定義の中に必要な売れに結びついた生産量で決めるようにする。

 

● 稼働率とは設備投資のうまさを計るもの

例えば、ある設備を導入する時に、一日に8時間稼動の能力で採算を考えて買ったとしよう。予想どおりの量が売れると稼働率は100%になる。ところが売れている量が予想の半分になると稼働率は50%になる。逆に、売れる量が2倍になると200%になる。16時間稼動しないと売れる量をまかなえないことになる。

つまり、稼働率とは売れる量に対して設備投資がうまくいっているかの物差しである。見方を変えれば設備の負荷状況になる。稼働率を高めようとすれば、注文を取ってこないと
上がらないし、または不要な設備を捨てて特定の設備に量を集約させるかである。

すでに導入してしまった設備を現場がどのように使おうと、稼働率は設備投資の考え方なので現場の改善指標としては使いづらい。

 

 

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