ユニホームの着こなし(2/6)

著者: エイム研究所 矢野 弘

2.安全性

(1)危険と保護具

 仕事の内容で、危険があるのが分かっている場合は保護具を使います。保護具は危険な内容に応じて設計されているので、いろいろ組み合わせて選定し、当事者の身長や体格でサイズを選び、試着して模擬テストをします。
 大切なのは、
① 自分が仕事場でどのような危険が降りかかるかを知っているか
② その危険に対して、保護具としてどのような物が必要かを知っているか
③ 選んだ保護具の機能、性能、寿命(どこまで耐えられるか)を知っているか
④ 装着して動作はどこまで制限されるか(曲がりにくい、見えにくい)を知っているか
⑤ 長時間、装着していると自分の疲れはどうか(休む間隔と時間)を知っているか

 

危険を知るためには過去の事故事例と、KYT《危険予知訓練》が有効です。保護具の選定には必ず専門家のアドバイスを受けて、さらにKYTなどを行った後で選定しましょう。
 未経験な危険(温度、光、外力、景色、足場、気体、風、音、他人など)は時々刻々と変化してやってきます。設備や環境は、一日の中や季節・年月で変化して人の行動をも変えていきます。
 本人は少しずつの変化で気付かない場合が多く、「今日も大丈夫 ! 」と意識せず仕事をしてしまいます。
 機動性では保護具を信じることが大切ですが、安全性では常に点検して疑うことも大切です。

 

(2)自分の身の安全は、  自分のため、家族のため

 自分しかこの仕事はできないと、仕事に自尊心や尊厳を持っている人は多いと思います。悪いことではありませんが、実際にはけがをすれば代わりの人はいるのです。会社としては、一時は大変な事態になりますが、操業しなければならないため、すぐに対処して代わりの担当を決めて操業します。
 治療中に代わりの人が活躍すると、そのままになり、けがが治って元の職場に戻れるかどうか定かでありません。元に戻れるのは、むしろまれです。職場で大きなけがや頻繁にけがをする人は、その職場は不適切だとして配置換えをする場合もあります。
 不幸な場合は職を失うこともあります。プロ野球選手を思い浮かべれば分かりやすいと思います。けがが治らない場合や、後遺症で思うようなプレーができなくなれば結果的に引退で、収入は途絶えてしまいます。
 空いたポジションはすぐに奪われるように人が入ってきます。みなさんの仕事も同じで、突然、家族は生活ができなくなり、さらに次の就職にも支障を来す場合もあります。

 

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安全は会社のためと思ってはいけません。自分
のため、家族のためです
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3.所属性

(1)ユニホームには、ブランドとプライド(自尊心)がある

 プロ野球のユニホームはチームごとに独自のデザインをしています。球児はあこがれのチームに入るために日々練習を頑張っています。いつの日かユニホームを着ることが目標になります。
 当人にはユニホームの価値を得ることでプライドがわいてきます。そのプライドはユニホームに負けない、ふさわしいプレーをしていく目標を持つでしょう。球団としては、より活躍して、よりブランドを上げてもらうことを期待しているでしょう。実際の試合ではチームの一員という自覚が当然わきます。 観客もユニホームを着ている選手はそのチームに所属している選手として見ます。
 どんなに職場で汚れてしまう作業着も会社のユニホームなので、同じことが言えます。出張でユニホームの姿でお客さまと会うことが日常になっていると思いますが、お客さまはその会社の人として見ます。
 着こなしは、あいさつで交わす名刺以上に第一印象に影響を与えます。

 

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 あの会社(チーム)に入りたい。あのユニホームを着たい
     →目標になる
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(2)コスプレ効果

 飲食業の内装や厨房や給仕の衣装は、店の雰囲気を創つくって、お客さまをその気にさせるためだと思っている人が多いと思います。ところが実際は直接的にお客さまのためではなく、従業員をその気にさせるためにあるのです。
 従業員がその気になると、言葉遣いやしぐさが、店のコンセプトに合ったおもてなしをするようになります。するとそれがお客さまに伝わり、お客さまがその気になるのです。 着こなしが悪いと、従業員自身が店のコンセプトになっていない、つまりプライドを持っていないことになり、言葉遣いやしぐさはおろそかになります。どんなに内装が良くて
も、衣装が良くても、たった一人の着こなしが悪いと、お客さまは敏感に感じ取り、二度と来なくなるでしょう。
 コスプレというジャンルがあります。これはそのキャラクターに「なりきる」ために、その衣装を着こなすのです。衣装がないと「なりきり」の気持ちなんか全く起きません。
 衣装がその気にさせて、周りの人が乗せられていくのです。

 

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