物づくりの小話し、あれこれ 61~70

物づくりの小話し、あれこれ(著者 小林弘司様)61~70

61.餅の青カピ

 正月の餅は、数多くつくるので、しばらくすると青カピがはえてくる。
なぜ青カピがでるのか?、青カビを発生させにくい様にするには、どうしたらよいか?
・餅をつくときにできるだけ、水を使うのを控えるとよい。
・風通しのよいところに置いておくとよい。
・吸湿性のよい、木箱に入れておくとよい。
・薄い、切り餅にして、乾しておく。
それ以外にも、多くの答えがあるかも、知れない。
しかしもっと確実な、青カピを発生させない答えがある。
「青カビが出るまえに、食っちやうことだよ…」
林屋喜久議の落語での小話である。
青カピが発生させるほど、”餅をつ<な”ということになる。
造り過ぎと餅の青カビ、これに似たことが生産の場にもある。
 スペース対策、スキッドの製作、防錆油塗布、仕分け等々。つまらぬ対策をしていないか?
結果の処置ばかりしないで、「造りの仕組み」をしっかりやらないといけない。

62.目的と手投

 組立ラインの「物流のありたい姿」はなにか?という質問があったとしたら、どう答えたらよいの
だろうか?、いろいろな答え方があるとは思うが次のも一つである。
部品を、ラインサイドに持って行ったとき、まさに「前に供給した部品が無くなる直前」であった。
という状態ではないだろうか。
 ラックに部品が残っていれば「早いタイミングに持ってきた」ということになるし、部品がなけれ
ば「遅いタイミングなので欠品になっている」はずである。
便ピッチ、発注テーブル、供給ルート・方法、かんばんの振れ、等々は、ありたい姿(目的)を実現
するための手投である。手投が目的になってしまっていないか?よく錯覚するところである。

63.新機種の評価

 新機種がでた。開発期間も短かかったし、その生産準備や立ち上がりも抜群であった。品質もすべ
ての評価が○で、かってない出来栄えであり、万万歳である。
 ところが、「思ったほど売れない」。
我々の部門はやることをやった、売れないとすれば商品力や販売力の問題である!、本当だろうか?
何かがおかしいに違いない。何かは、わからないが基本的なものが間違っているのだ。我々は何かを
見落しているのだ。と考えるほうがよいのではないだろうか?
 いろんな指標は過去の比較においてだされたものであったろうし、品質だって、お客様が要求して
いる特性と違うものを評価しているのかも知れない。
売れて、そして儲けて、万万歳なのである。
そうでないなら、何かが間違っている。そんな風に考えないと……。
仮に商品力や販売力の問題だとすれば、その部門を補完する動きをとらなくてはならない。

64.スループットと在庫と経費

 スループットとは販売を通じて組織が金を生み出す速さのこと。
在庫とは販売するのが目的で、組織が購入に費やした全ての金のこと。
経費とは在庫をスループットに変えようとして組織が費やした全ての金のこと。
◇1個でも、多く売れるようになったか(スループットは増えたか?)
◇(在庫は減ったか?)
◇(経費は下がったか?)
この3つの鍵が、バランスよく機能し、その結果、「儲うけた」というのが製造組織のゴールである。
私の、あなたの、ゴールは別にある。

65.ひと口で表現すると

 日本人は短歌とか川柳とか、座右の銘とか、短い言葉で全容を表現することが、好きである。
何事も、「ひと口で表現すると」となる。TPSについてもひと口で要約すると、どう表現すれば良
いのだろうか?
ひと口で表現する是非は不問として、あえて、まとめてみると……
その1
 TPSは、JITと自働化の2本の柱でなりたっており、その前提条件は平準化である。
  JITは物の流れ化であり、自働化は良いものをつくることである。
その2
 必要な時に、必要な物を、必要な量だけ、できる限り小さな単位で、<造る>あるいは<運ぷ>で
  あり、その基本は後補充生産である。
その3
 ムダを顕在化させ、それを撲滅させることである。(かんばんは問題を顕在化させ、人間の知恵を
 ひきだすツールである)
その4
 リードタイムを短縮し、生産性を上げ、儲ける集団として年輪を刻むことである。
その5
 あるべき姿に挑戦し、「まずやってみる」ことである。
 まだ、他にも、いろいろな表現の仕方があるとおもうが、まあこれぐらいで……。

66.わからないという灰色の領域

 物事に「良いこと」と「悪いこと」しかなければ、また、それがよく判るなら、苦労は少ない。
しかし、「良いか、悪いか、判らない」という灰色の領域というものが必ずある。
それは、時々の新しい判断基準でも異なってくる。正しいと思っている現状維持も、はや退化し、変
わっているかも知れない。
 自主研の良いところは「判らない、灰色の額域」をテーマに選び、展開するところにある。
だから、自主研究という名がつくのである。
判らない領域に、粘り強く挑戦し「まずやってみよう」という雰囲気ができることが自主研です。
「良いこと」が判っているのに、実施していないのは、やって下さいということになるし、「悪いこ
と」は、やめて下さいということになる。

67.かんばん化のいきさつ

 在庫が多い?「だからかんばん化して」といった表現をするひとが多い。
決して、間違いではないが、もともとかんばんにしたのは、「切れて(欠品して)仕方がないから」
生まれたのである。そのことの意味をよく認識する必要がある。
 かんばん化して、欠品に成りやすいなんて考えている人には……。

68.お米とリードタイム

 海外調達が難しいとか、リスクが多いとかというのも、リードタイムが長いからである。
リードタイムが長いと、予測がむつかしく、、変化に対応できない。
 93年度のお米の不作は、我々の生活のリズムを狂わし、大きな出費にも繋がった。
国政としても、外米を余してしまうようなことにもなり、他国から顰蹙をかう事態すらおきてしまっ
た。これも、お米のリードタイムが、「一年という長さ」であるために、難しさがあった。
 仮にお米が12毛作(1ケ月のリードタイム)であれば、外米を余したとしても、その量は少ない
はずである。また的確な手も打てたと考えられる。
生産は、リードタイム短縮との戦いだといって良い。

69.運搬はムダなのか?

 運搬は付加価値を生まないからムダである。いやいや、物は移動させなければならないので、これ
はムダとはいえない。
どちらの言い分にも、理がある。運搬とはそういう性格のものである。
いまの生産条件では、やむなくA点からB点まで運搬しなければならない。しかし、うまく工程を連
結すれば、その運搬作業は無くなってしまう。またA工場から、B工場へ運搬しているものでも、工
程系列を変更することで、無くなってしまう。
A会社からB会社へ運搬していたものでも、内製化によって無くしてしまうことだってできる。
今の生産条件のなかではという前提条件がつくのである。
だから、運搬の合理化を考えるときは、その造り方をしっかり見据えていないといけない。
ひょっとすると、ゼロにすることだってありうるのだから……。

70.構内運搬の移動は10%が相場

 運搬時間 = 移動時間 + 手扱い時間 である。
移動時間とは、A点-B点-C点-D点-E点と「物」を集めにまわったり、配りにまわったりする
時間である。
手扱い時間は、積んだり、降ろしたりの積降ろし時間であり、生産量に比例する。
(捜したり、積み替えたりするのは、ここで言う積降ろし時間でなく、ムダである。)
構内運搬の場合、
運搬時間を30分/回とすると、移動時間は3分(10%)、手放い時間は27分(90%)という
のが、相場である。
仮りに30分/2回の多回運搬(運搬ロットを小さくすること)をしたとすると

     運搬時間 = 移動時間 + 手扱い時間

 従来 (30分) = (3分) + (27分)

 今回 (33分) = (6分) + (27分)
                                          |………▽4分の改善
 改善 (29分) = (6分) + (23分)

となり、少しの手扱い改善(▽4分)で運搬の小ロット化が可能となる。
一度に運ぷ方が徳と考えてしまう人や、運搬は生産量と比例しないと決め込んでいる人には、この式
の意図するところを考えてもらいたい。

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