物づくりの小話し、あれこれ 103話 お米の洗い方(研ぎ方)でご飯がかわる

物づくりの小話し、あれこれ(著者 小林弘司様)

103.お米の洗い方(研ぎ方)でご飯がかわる

 薪でご飯を炊いていた頃、「はじめチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いても蓋とるな」がうま
く炊く極意であったと聞く。
しかし、昨今の炊飯器は圧力釜であるし、火の加減だってマイコンでコントロールされ、上記の
極意は十分に織りこまれている。
ところが、こんな実験があった。
 マンションの20家族に、同じ産地・銘柄の米と、これもまた同じ炊飯器を使い、同じ量のお
米でご飯を炊いてもらったのである。
 ねばり、つや、うま味、甘味などを評価する、味度計というのがあって、科学的に評価すると、
平均で60点、低い方で50点、高い方で73点。5点の差で味が判るといわれており、その差
は非常に大きい。なぜだろうか?
そのまえに、おいしいご飯ができるプロセスを説明しておく必要がある。
炊飯の過程で、米に「ひぴ」が入る。水を吸収して米が膨張すると、その「ひぴ」からでんぷん
が溶けだして、全体にまとわりついて、膜を造っていく。そのでんぷん糸が広がり、最後には網
目になって、それがおいしいご飯のもとである。
 しかし洗う前のお米の表面には、不純物がいっぱいある。タンパク質もその一つで、これらを
しっかり洗い落として、でんぷん糸の流れをスムーズにする「お米の洗い方」が必要である。
お釜に水を一杯入れ、その中で手でかきまわしている人。少し水は少ないけれど白い米かすだけ
を繰り返し洗っている人、時には、手ではなく、泡立て器を使っている人もいる。
 こんな洗い方では駄目で、水を極力捨てて、少し残った水で、30回前後、米と米とが擦りあ
うような感覚で、腰を入れて研ぐのである。
そう「お米を洗う」のでは「お米を研ぐ」とよいご飯がいただける。
 この研ぎ方を知ったひとは、お米を1~2ランク下げて家計を救けることもできる。
小話しも、時には役立つことだってある。
 ①お米の銘柄と②炊飯器で決まる、それに③研ぎ方が加わる。
 ①②で決まってしまうという思い込みが生産の場でもある。要因は多岐に及ぷ。
 だから改善も際限りないのである。

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