仕事の終わり際 「終わりは次の始まり」 (2/2)

努力の必要な仕事は「リズム」をつける


 繰り返し作業のような仕事は、調子に乗る状態をつくると、作業量そのものは減らないけれどスムーズになり、止まらない分だけ結果的に時間が短くなります。また、かかる時間も予測できるようになります。音楽のリズムのように作業にリズムをつくるには、作業手順の中に順序に合った仕掛かりを配置しておくことです。

 トヨタ生産方式の中で標準作業というのがあります。標準作業の3要素として、タクトタイム(要求ペース時間)、作業順序、標準手持ちがあります。標準手持ちとは、人が手待ちしないように工程内に持つ最少の仕掛かりです。家事でいうと洗濯しながら、料理しながら、掃除しながら、すべて同時にしようとすると、洗濯機の中には自動で洗っている洗濯物、料理はタイマーをセットして煮込んでいる状態の料理中の物、それぞれが自動停止するまでは掃除をする。事の手間が減っているわけではないが、重なっているため事が早く進みます。一つひとつの仕事から見ると途切れ途切れなのですが、人から見るとテキパキと仕事をしていることになります。
 もし重ねずに洗濯しかしないとなると、洗濯機の前でぐるぐる回っている洗濯物を終わるまで眺めて待つことになります。洗濯が終わって次に料理をすると、煮込むまで鍋をのぞきながら待つことになり、まったくリズムがありません。
 新人のころは、一度に数件の仕事を与えるとパニックになって「一つずつにしてほしい」と文句を言ってきますが、一人前の社会人になると、同時に数件の仕事を持っている方が調子に乗り、仕事しやすくなります。

 

仕事の終わりは楽しみを残して終わる


 技能など勘コツを覚えていかないといけない仕事は、繰り返し継続的に訓練しなければなりません。「必要だから努力しましょう」では、やる気が出ません。やる気のないまま訓練しても上達しません。やる気を出すためには、いきなり難しいことをさせるのではなく、段階を分けて徐々にレベルを上げていきます。

 区切るとするとレベル単位の区切りになり、習得するごとに終えて、次回に進むのが普通の進め方です。この方法だとレベルごとに満足してしまい、次回参加する楽しみがわきません。まして、次回の内容を教えていないので自主的に予習や練習ができません。間違った方法で自主練習してしまうと後で修正するのが大変です。
 技能の指導で、10 回行って1回も成功しない状態から、5回くらいまでできるようになってくると面白くなってきます。向上心がわいてきた状態で、完璧になるまでもっとしたくなります。そこで向上心を抱いた時に訓練を止めます。当然のように「もっとしたい」「物足りない」という気持ちを持ちます。「次回は同じ項目から復習を兼ねて始めます」と言って終えます。
 この気持ちを持つと、次回までに10 回中10 回うまくいくまで自主練習をしてしまうでしょう。できない部分は指導中に分かっているので、間違った方法で練習はしません。次回の訓練が楽しみになり、休まず早く来るでしょう。本人は楽しみで行うため、努力で上達したとは思わないでしょう。自主練習させる方法として、とても効果があります。
 今日の終わりと明日の始まりは、つながっています。帰る時に明日の朝から何をしようかと続きを決めて帰ると、明日が楽しみになります。

「結果の達成感を求めるのではなく、過程の面白さを求めることでスピードもレベルも上がる」

人を引き止める「終わり際」の応用例

・ テレビのバラエティー番組でのCM は、話題になる人が登場するシーンや、クイズなどでは解答を出す前にCM が入る。イライラするけれども、人を引きつけたままにする方法としては素晴らしい。
・ 連続ドラマはこれから、「どのようになるのだろう」という興味を持たす状態で終えて、続きを見てもらうようにしている。

 

終わるのは始めるよりエネルギーが必要


 商売や会社をたたんでやめてしまう、要するに引き際はとても難しいのです。赤字が出て先行きが見えないとか、後継者がいなくて継続できない場合は、いつ閉社するかの決断に迷います。
 まだもう少し行けるのではと、ズルズルと継続すると借金が累積し、取引の滞りが出て、関係者に多大の迷惑をかけてしまいます。一番迷惑をかけてしまうのは従業員で、給料や退職金も無く、突然の解雇になったりします。
 引き際というのは、まだ継続できる状態で、資産的に従業員への退職金や取引先への支払い、在庫の処分などができる状態でやめるべきです。これは創業する以上に、とてもエネルギーが必要です。そのため歳をとっていても体力があるうちです。
 上手にやめると、改心して新たに起業するとき、以前に勤めていただいた人に声をかけると喜んで参加していただけるでしょう。新たな商売での取引先も信用していただけます。


終わり方は次の始め方に多大な影響を与えます

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