株価低迷(資金調達の変化)

著者: エイム研究所 矢野 弘

今株価が低迷している。なかなか企業も増資しないし、個人投資家も株を買おうとしない。なぜ株に魅力がなくなったのであろうか。
 企業または起業家が何か事業を開始しようとした時、資金が必要になってくる。その時、資金の調達方法として上場して株を発行する方法がある。

 

その時、資金の調達方法として上場して株を発行する方法がある。そのほかに銀行からお金を借りる方法もある。しかし銀行から借りるお金は返さなければいけないし利子もついて儲けを持っていかれてしまう。そのてん株は借りているのではないため返さなくてもよく、起業家としてはあわよくば馬券が当たったかのように数倍になってお金を集めることができる。

 

しかし、発行した株の半分以上を買われてしまうと、経営権を奪われてしまうため起業家にとっては面白くない。株は資産のほんの1部でしかないのに、すべての資産を乗っ取られたようになってしまう。起業家としてはとても面白くない。

 そこで企業は考え出した。せっかく育てた会社をただ単に株を買われるだけで、もっていかれるのでは面白くない。それならば銀行からも借りず、株も公開せずに、なんとか自分の金で事業をさらに大きくできないかと。

 

そのお金とは、今まで企業の活動で儲けてきた利益、つまり剰余金のことである。
今まで企業は利益の税金逃れのため本来、剰余金となるところを不動産や他社の株に投資したり、美術品を買ったり投機的な資産に変えて持っていた。ところが不動産の値が下がったり美術品も価値が落ちてきて、売ろうにも売れなくなってきてしまった。
 みなさんご存じのバブル崩壊である。売ったとしても買ったときより安いため資金調達どういう目的では使えなくなってしまった。

 

価値が下がらなくても、事業拡大や新規事業の開発に資金がほしいと不動産や美術品を売って資金調達しようものなら、世間から『あの会社は資金不足で身を切り売りしているぞ』と評価され株価は一変に下がってしまうため、やっばり売ろうにも売れなくなってしまった。よその会社の株も売ろう物なら、その会社の株が落ちるし、へんな投機筋に買われると乗っ取られてしまい恨みを買う。

 

この失敗を踏まえ、企業は剰余金の使い方を考え始めた。今はやりの言葉でいうとキャッシュフローである。この剰余金を現金や預金で持っているといろんな資本として活用できることが分かったのである。
 
 そうなのです株は単なる資金調達の一手段だったのです。さらに貸借対照表を見てもらうとよくわかるように、剰余金は資本金と同じ項目のところにある。
 そうです剰余金は資本金なのです

 

これに気がついた企業はこの剰余金を活かし、株による増資に頼らず資金調達するようになり見かけ上、株に対する興味が薄らいできたのです。株価の低迷の原因はここにあります。どこかの収益の高い大企業がテレビに出て政府に株価対策の物言いをいっているが、とうの本人は自己資金が豊富なため、これを見ると言っている方向は政府の方向ではなく、株に頼って資金調達している他の企業にいっているように見える。

 

もし、額面割れ(50円以下)になっても、資金繰りに困らなければ、株主には迷惑がかかるが一向に困らないし、倒産もしない。非上場の企業と同じ状態になるだけで、非上場の会社でも立派な会社がある。

 世間一般では証券会社の株のアピールが下手だとか、足りないとか、購入しやすいように小口化したり、手数料を下げたり、インターネットで出来るようにしたりして、個人投資家をいくら刺激しても株を発行している企業そのものが資金調達としての興味をなくしてきたので活気づくはずがない。

 

利益を上げても税金で半分以上持っていかれるけれども、企業活動の長年の集大成である剰余金を現金・預金で持ち、いつでも資金調達を社内でできるようにしている企業ほど強いのです。この志しでいくと必然的に現金主義(キャッシュフロー)になってしまう。

今までの表向きの資本主義は資本金(株)主義でした、これからは剰余金主義である。

 

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