こんな設計しだしたら注意

著者: エイム研究所 矢野 弘

■ 図面でこんな現象がでたら注意 ■

 ●機械設計編

 ・仕上げ記号(▽)をやたら多く記入する
 ・ネジの径が強度計算どおり決めていて、いろんなタップ径がある。
 ・板厚を剛性計算や強度計算どおりに決めて板厚がパラバラ
 ・有限要素法で解析した形状どおりに設計して加工困難
 ・見えないところも塗装や意匠メッキをしている
 ・センタ基準で部分の寸法を記入する(センタには、なにも存在しないので物づくりでは基準にはならない)
 ・板金の曲げで展開すると重なる(笑い事ではない。ほんとうにある)
 ・破壊しないと寸法が測れない
 ・軸と穴の公差をやたらきつくする(市販のブシュを使わない)

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●電気・回路設計編

 ・両面基板,多層基板なのにジャンパー線がある
 ・抵抗の値を標準数列の一番多い数列をつかう
 ・汎用電子部品にて回路上の値は同じだが類似品の品番と違う部品をつかっている
    (メーカー違い,モデル違い,ランク違い,大きさ(電力)違いなど)
 ・商品寿命の長い商品に単寿命のICを使う(生産中止の影響で製造できず)
 ・シールド部品がやたら多い(後から囲いだし、ショートの原因となる)
 ・ケースを閉めると電子部品の頭やリード先端に当たる(ショート,断線の原因)
 ・当たるからといって絶縁シートを張り、よけいに押さえてしまう

 

・基板を止めるネジとドライバ(工具)を入れるスペースが無い
 ・フローハンダ付け面の部品の向きがブリッジ不良や付着を起こす方向に配置
 ・基板分割がプレス打ち抜きでないとできない(Vカット,ミシン穴など考慮していない)
 ・手ハンダ付けが3点以上
 ・ディプ面に後付けは重病
 ・熱の膨張係数(朝夕・夏冬の温度サイクル)を考慮せずハンダ部の設計
 ・リード部品なのに穴がなくパターンにハンダ付け(設計変更せず放置は重病)
 ・リード部品の線径より小さい穴

この様な現象がでると、まともにつくっても良品にならない設計となる。
設計した本人もそうだが、検図でこれを見逃すとと検図者も再教育である。

 

造りにくい例としてここに何例かあげてみる。

●例1 地獄の組み立て
  カバーなどフタを閉めてしまうとネジが隠れて本締めができない。
開けて締めようとすると固定していないので、ずれてしまいネジを締めることができない。いつまでたっても合わせることができない。これを地獄組み立てという。
 この様な設計をするとネジ締め忘れの原因にもなる。

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●例2 カバーのネジ止め
 仮締めしながらカバーを組んでいかないと最後のネジが合わない。ネジを再度繰り返し本締めしていかなければならない。

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■ 標準の重要性を教育 ■
 
 ●標準化の目的とは、
 ①過去の不具合を乗り越えて確立されてきたものを使い、クレームの再発防止を図る。
 ②事前に開発して技術として標準化し、応用して新規商品のスムーズな立ち上げを図ることである。
 標準化とは予め開発検討しておいて、いつでも量産に使えるようにすることである。

 

つまり標準化しておけば新人でも一人前の設計ができるというのは大きな勘違いである。標準化された経緯を知らなければ、その技術を使うのは危険である。クレームにしても開発にしても数々の実験や失敗の積み重ねであるため、標準化された結果だけを見ても使い方が分かるはずがない。

 なぜそうなったかの意味は見ただけでは分からない。技術は日進月歩、発展変化しているので新しい技術(標準)について、新人だけでなく先輩がたも常に学習しなければならない。間違った標準や旧の標準を記憶だけで見つけて応用していたのではクレームが再発してしまう。

 

ましてや同じ会社なのに部署が違うだけで、知らずに同様なクレームを出したり、だぶって同じ技術を開発していたのではムダである。

■ こりない設計(社内体質まるだし) ■

 次に市場からクレームとしてあまり返ってなくて、同じ設計不良をした例をあげる。これらは設計者はクレームとして出やすいと分かっていても、ついやってしまう個人プレーである。

 

●例1 ケースなどパッチン爪の形状
 毎回設計するたびにケースを止める爪形状を設計したのでは試作検討で時間をムダづかいするし、ユーザーから「またか!」と見られる。重要な製品でないという意識で、いつも新人設計させているのではないかと思いたくもなる。生産したときは良品でも使っていると磨耗や塑性変形でクレームを出す場合がある。あらかじめ標準化しておくと、新人でもさっと検討することなく図面を引くことができる。

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●例2 ネジの標準化
 例えばM6のボルトをいちいちその都度、設計(材質,山径,谷径,ピッチ,頭形状,首形状,長さ,表面あらさ,表面処理など)していたのでは強度や剛性,耐蝕,対振動性など毎回実験検討しなければならない。

 めんどくさいからといって図面だけ描いて検討もせずに、大丈夫だろうと量産に入ると大きなクレームにつながり、事故を起こす場合がある。たかがネジでは済まされない。部品には1つ1つの機能(目的)があり、その機能をそこなえば、ネジの1本でも全体を機能不全にしてしまうことさえある。

 

標準化のさえたるものがJISの設計便覧であり、この中からネジを選ぶとネジ単体としては品質が確保されているので、いちいち検討する必要はない。さらに市販で売られていればスムーズに調達でき量産化できる。これはコストダウンの意味ではなく早期に品質が確保できるということである。

■ 前工程が楽をするとどうなるか ■

 

検討する時間がなかったり、検討漏れのまま設計し技術的に確立していないと、まともにつくっても良品にならない場合がある。その設計の下手さ加減をほっといて製造で調整や修理まがいのつくり方で逃げると、製造での事故につながり、その後工程でのお客さんに多大な被害を及ぼすようになる。

 とかくクレームがでると、なぜかしら製造に対して真っ先にものいいがくる。確かに造ったのは製造であるがほとんどの場合、原因は前工程の設計にある。品質の80%は設計段階で決まるといっていい。コストも同じである。これは設計が楽(苦労を避ける)すると、必ず後工程である製造が苦労する。これは定石である。


設計に限らず前工程が楽をすれば必ず後工程が苦労する。仕事というものは後工程が楽になるように苦労することである。製造の現場も設計されたものをただ受け入れて作るのではなく、「このようにするともっと造りやすい」とか「不良品ができないようになる」とかそういう意見を活発にかつ葛藤する文化を創らなければ、すぐれた設計者を育てることはできない。

「お客さんが企業を育てる」というように後工程の製造現場が設計者を育てなければならない。決して前工程の設計が製造を育てるのではない。ニーズは後工程からくる。

  前工程は後工程が楽になるように苦労すること

 設計が楽をすると後工程の製造はつくるのに苦労する。不良の多発や原価アップをまねく。この格言は製造や営業,購買,生産技術も同様である。あなたのお客さんは後工程である。

 

 

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