若いうちに反面教師を持て (2/2)

著者: エイム研究所 矢野 弘

●若い時は苦労を買ってでもやれ

「若い時は苦労を買ってでもやれ」という格言があります。格言は、ほとんど後悔からつくられるので、そうしなかった人がつくったのかもしれません。他人から苦労させられるより、自らの意思で苦労する方が精神的には安定できます。

労力は大変かもしれませんが、すすんで自分が思う反面教師の部下になって、いじめてもらうことをお勧めします。

 

新人のころは未経験な仕事が多いので、何をしても当然のことながらスムーズではありません。2倍も3倍も手間がかかります。しかし二度目以降では、一度通った道なので、最初のころより半分以下の時間でできるし、一人でもできるようになってきます。それでも上司は仕事が遅いと怒るかもしれません。

何でも批判する人がいます。実は、その人は特徴を見てくれている人なのです。言い回しがネガティブなだけで、特徴分析は優れているのです。特徴を教えていただいていると思えば、生かすのは自分自身です。

 

相撲で舞の海という力士がいました。力士としては小さいが、その小さいのを生かして、スピードがある多彩な技をあみ出し、巨体を投げ飛ばして快進撃をしました。他人からは欠点と見られても、巨体の力士ではできない技ができるように、特徴を利点に変えたのです。

 

●嫌いが好き

「こんな人になりたくない」と思っているということは、その人を無視しているのとは違い、ずっと気にかけているのです。嫌いということは、あなたもその人の特徴を把握していることになります。

長々と説教をする上司の説教の内容だけを聞いてみると、間違ったことを言っているわけではないことに気づくでしょう。細かい所を指摘されるのも、「よくぞ、ここまで親切に見てくれている」と思えば、感謝すべきです。

他人の責任にする無責任な上司は、どの部分にどれだけ責任が必要かを知っているからこそ、他人に責任を振り分けられるのです。言い回しで腹の立つことがあるが、その部分を無視して内容だけ聞き取れるようになると素晴らしい特技となります。

そうすると、どんな人でも「そうなんだ……」と受け止めることができ、反面教師が好きになります。「聞く力」は反面教師がいないと向上しません。

 

●将来どのように役に立つか

成功者から学びたいのは分かりますが、これは50才過ぎてからでも学ぶことができます。大切なのはやってはならないことを、いかに若い時に学ぶかです。経営者になって、やってはならないことをしてしまうと、若い時は自分や職場といった限定された範囲での影響で済むはずのものが、会社そのものを倒産に導くことにもなりかねません。

全社員や家族、関係会社に影響を与え、とてつもない代償を払うことになります。

ネガティブ部分

例えば、若い時にしつこく文章を一字一句指摘されるのを経験すると、経営者になったときに重要な契約書を自分でつくれるようになります。もし鍛えられてない状態で契約書をつくると、モレや解釈が異なるような文章をつくり、大損をすることになるかもしれません。

今は「あの人が定年退職しても送別会なんか行かないぞ」と思っていても、反面教師として選んだ人の年齢になってくると、「あの人のおかげ」と思えるようになるでしょう。もしかすると将来、あなたは部下を教育するときに、故意に反面教師を演じているかもしれ
ません。

親や上司になった時に分かるのですが、若い時はそれを受け止める能力がないので、分からないのです。人が成長するのは、どんなに文明や科学が発達してもこればかりは変わらない。

 

ページ上部へ