物づくりの小話し、あれこれ(著者 小林弘司様) 86~90
86.同窓会での待ち合わせ
女子学園の同窓生が、大阪駅中央の噴水前で、午前11時00分に待ち合うことになった。
Aさんは、大阪市内で地下鉄を利用すると30分で着ける。
Bさんは、パスとJRを乗り継いで、50分かかる。
Cさんは、少し不便なところに居て、帰りのことも考え、車でくるという。うまくいっても90
分は考えておかないといけないようだ。
Dさんは、遠いところに住み、JR、新幹線を利用して来る。3時間はみておかないといけない。
おのおの移動時間、パス・列車時刻、交通渋滞なとを予測して、家を出る。
これは移動時間だけの話しで、化粧したり、着替えしたりする時間をさらに見積もっておかない
といけない。お洒落な人は美容室へでかけるかも知れない。
JITとは、この4人が、大阪駅中央の噴水前にいかに効率よく集まるかということである。
こんな風に考えると
・リードタイムが短く
・バラツキが小さく
・乗り継ぎの手待ちがなく
・前準備をしっかりやっておく
ということが大切である。
この噴水前の指定の時刻が、ダイハツ工業のライン上の車であり、4人はその工程で使う部品と
考えると解りやすい。不利な条件の人は、随分前に着いたり、遅れたりしてしまう。
88.時間測定とベテラン
、
Kという工程のタイムスタディをA直でやったとする。N=5回(62”60”58”63”
60”)で、平均すると、60.6”であり、バラツキは5”もある。
シフトが変わって、裏番のB直の人でK工程のタイムスタディをやったとする。
この方はベテランでN=5回(58”・57”57”58”56”)で、平均すると57.2”で
あり、バラツキは2”である。
さて、この工程の仕事量はいくらと見たらよいのだろうか?
基準という見方をすると2つの視点がある。
この工程は、45”でやらないと、採算が合わないとすると45”が基準。
タイムスタディをベースに基準を決めるとするなら、ベテランの一番速い、56”が基準。
ということになる。
すなわち、今時点で「ありたい姿」を基準においたら良いのである。
そして「ありたい姿」と「今の実力」の差が問題点であるととらえれば良い。
基準を56秒にしたことと、A直の人がその基準でやれるということとは別問題である。
基準で、物造りができるなら、楽なのだが……。
89.素人の方が良い
自主研では、そのショップのベテランと、ショップとの関わりが薄<て、素人に近いメンバー
と混成チームになることがある。
これも、自主研のよいところの1つで、素人は新しい仕事に興味を持ち、知ろうと努力する。
そして純粋に見るのである。
塗装のホコリ、プレスのゴミカミ、鋳物の巣穴など、関係した人は、その難しさが解りすぎて
いて「多少、でるのは仕方がない」と、どこかに許容している「スキ」がある。
しかし、素人は、シンプルに「なぜ?突然でるのか」判っているものから「なぜ押さえられない
のか?」と考える。
「よくないことは(できない理由)、知らない方が良い」ということもあるのである。
素人から突っ込まれて、ベテランの方が「タジタジ」になっている場面を見かける。
また、その素人から、良いアイデアが出ることも少なくない。
素人の参加、歓迎である。
90.面接とよそ行きの姿
普通の面接官(者)は、入ってくるところを色々観察し、面接が終わると、メモしたり、評価
シートに記入したりして、出ていく姿は観察しない。
よい面接者は、入ってくる時に、前者の評価のために下を向き、面接終了後の出ていく姿を、し
っかり観察する。
要は、「入ってくる時はよそ行きの姿であり、出ていく時は普通の姿にもどるから」だと言う。
ホテルのチェックインも馬鹿騒ぎして入る人は少ない。チェックアウトの時に、部屋のあと始末
やその他の言動で人柄が判る。入学式と卒業式もしかりである。
職場も同じで、入り口の現状把握や調査だけだと、よそ行きの姿をみ世るだけである。
現場の中にとけ込んでも、同じ状態であれば、本当にすばらしい職場である。