2007年問題をぶっ飛ばせ 技術技能の伝承 管楽器

著者: エイム研究所 矢野 弘

「後工程は指導員。一個流しのジャストインタイムで伝承」

背景

 現場の団塊世代に頼った構造から抜け出すために技能技術の伝承も行わなければならないが、楽器に対してのお客様の要求レベルが年々上がってきて、ものづくりのレベルも同時に上げていかなければならない。

 

<先輩(51才,経歴30年以上)>

●仕事を始めたきっかけと当時の教えてもらい方

入社して配属されて以来ずっとトランペットなどの管楽器のハンダ付け工程で、なぜ自分がここに選ばれたのか分からない。当時の教えられ方は基準書とかなく、最初は練習用の部材でハンダの流れ方からキズヘコミの修正もやり5日くらい実習した。実際に製品のハンダ付けをしたのは2カ月後ぐらいである。

 

最初にハンダ付けをした時に周囲に回すとくっつくもんだと思っていたが、中まで染み込むものだとは思わなかった。初めての製品は先輩からだめだといわれ、やり直しの繰り返しであった。3~4日教わったが、その後は他の人はどうやっているかを見て自分で覚えた。歩いているときにのぞいて見たり、教えてもらうより当時は真似る盗むであった。今でもずっとそうしている。自分の腕を上げるのに終わりはない。

 

● 任された時期はいつですか。

2年ぐらいたって慣れたころに先輩から思い切りゴツンと拳骨をもらった。慣れから手を抜いていたのでしょうね。それ以来いいのをつくろうと品質に対する思いが強くなった。

 

最初から最後まで一人でやってくれと言われたのは10~15年後ぐらいである。それまでは任されたとは思わなかった。「良いも悪いも自分次第だ」と思ったときに任されたと思った。五感の中ではすぐれた目と手が必要で、ハンダの送りやバーナーの握り揺れ具合でどうやったらうまくいくか、工夫は今でも続いている。一個一個ちがい、季節や気温によってもハンダの乗りが異なるので全く同じ方法ではできない。しかしどうやったら同じものができるか毎日毎日考えている。ハンダ付けは難しい、30年たっても難しい。今でも勉強しないといけないと思っている。

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<後輩25才経歴3年>

●仕事を始めたきっかけと当時の教えてもらい方

この職場に入る前はヤマハ発動機で2年間出向していて、20代前半だったので若さで配属されたと思う。釣りの仕掛けづくりが好きで手先は器用だと思います。教えてもらい方は指導員の方の作業を何回か見て、自分がやるときはいきなり製品だったのでこんな素人が製品をつくっていいのかなとためらったことがあった。もちろん製品は指導員の方がチェックするのですがハンダを多めに付けることが多かった。

 

●教えられていた期間と任されたという時期は

ラインの作業で教えてもらったのは最初の3カ月くらいである。技能伝承活動を全社的にしていて、月2回で1年間仕事が終わった後にやった。一通りの工程を任されたのは3~4カ月後ぐらい。このハンダ付け作業は当時勘コツが多く特に接合部の隙間がばらつきグラグラしたりハンダの染み込ませに大変で思うようにできなかった。提案活動をやってる中でだれでもできるようにジグを考案しバラツキを抑え勘コツの度合いがとても和らいだ。このアイデアはやっている人にしか気がつかない。

 

隣にいる先輩には何をやってもかなわないです。すべてにおいてハンダ付けは先輩に聞けばわかる。自分の後工程なので僕がつくった直ぐ後で先輩が見て感じるところがあれば教えてくれる。先生が後工程にいることはありがたいし心強い。とてもいい刺激になる。

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