物づくりの小話し、あれこれ 71~75

物づくりの小話し、あれこれ(著者 小林弘司様) 71~75

71.しくみと改善力は天秤の関係

 しくみをうまくやりすぎると、改善力が落ちる。
しくみがでたらめだと、改善力でカバーしようとする。天秤のような関係にある。
文武両立せず、両雄並び立たず、というか、なかなか上手くいかないのが、常ではあるが、この2つ
がデットヒートして、競いあえば、本当によくなってくる。
しくみがうまくいきすぎて、一見よく見える場合には、甘々になっている場合があるから、注意。
 最近は、ややもすると、OA化などによって、いろいろな支援システムができ、情報だけが先行し、
改善力が弱くなってきている傾向が懸念される。
ここでいう、改善力とは、
  1.作業をみて、なおす力
  2.設備をみて、なおす力
  3.品質不良、故障をなおす力 であり、
なぜなぜを繰り返し、追求していく力をさす。

72.雲泥の差

 理解してもらうエネルギーを1とすれば、納得してもらうのは3、やる気にさせるは5、実行して
もらおうと思うと10、のエネルギーが必要である。
ましてや、言わなくても、みずから課題をみつけて、実行したり(更に増幅したり)するのは、20
のエネルギーを注ぎ込む必要がある。
上記の「~してもらう」という用語を「自ら~をする」におきかえても同じで、努力がいるのである。
「言うは易し、行い難し」とはよくいったものである。
理解すると実行するの差は、少しオーバかもしれないが、雲泥の差ほどの開きがある。
 憎き怠惰の業よ!
そんな比であるから、方針展開にしても、フォローをきっちりやらないといけない。
ややもすると、「もう、済んだことを、とやかく言っても仕方がない、大事なことは、これからどう
するかだ!」といって、次の計画の論議にシフトする。これほど「楽なものはない」。
 同じようなことが、新機種の立ち上がり直後にもよくある。
それが、売れなかったり、評判がわるかったり、儲けられなかったりすると、その車の粘り強い育成
よりも、次の新新種の準備にシフトし、期待する。
今、売れずして、次の車の売れる保証がどこにある。
今、改善して、生産の流れをつくらずして、次のレイアウト・工程計画で、うまく流れをつくれるは
ずがない。要は今の実力以上のものは、できないということである。

73.目のない(省という字の目がない=少)、少人化ラインとは?

 必要生産数に応じ、生産性を落とすことなく、何人ででも、ラインをつくりあげること。
すなわち、ラインが定時で終わるようになったら、無条件に1人(1工程)省人し、作業バランスが
とれるラインにすることにより、常に1人工分の仕事を与え続けることである。

 その時の、技能員の集約化(大部屋)の条件は次の式で表わすことができる。

  (N×8) = (N-1)・(8+T)
                                     T:許容残業時間(H)
                    N:必要技能員数(人)
     ――――――――――――――――――――――――
  | 残業時間   |  2H |  1H   | 0.5H |
   |――――――+―――――+―――――+―――――|
  |技能員(N)| 5人以上 | 9人以上 |17人以上|
     ――――――――――――――――――――――――
残業2時間の枠のある職場であると5人以上、それが1時間の枠しかない戦場だと9人以上の技能員
の大部屋化が必要である。

そんなに人が集まっている戦場ばかりでないので、以下の方法によって、少人化をはかる。
   1)仕事の分担を見直す。 → 連結方式
  2)ラインの統合により負荷(生産品目の引きあて)を見直す。 →  混流方式
  3)人が移動して、端数工数を吸収する。 → 集合方式
  4)それらの組合せ。  →  混流・集合方式
各々、特有の問題点を持っており、それを解決するのに、苦労しているのである。

74.パジャマのポケット

 通常のパジャマは、胸元や両サイドにポケットがついてある。あまり意識していなかったので、気
付かなかつたが、自分のパジャマを調べてみると、確かについている。
夜寝るだけなのに、なぜポケットがついているのだろうか?
 この話、朝のテレビ番組で、スポット的にとりあけていたのを聞いたのであるが、一瞬、そういえ
ば、「ムダだナ?」と思ったし、「何か意味があるのだろうか」と興味ももった。
 各々のメーカから、その「わけ」を聞くと、次のような理由となる。
①チヨットした小物入れ(例えば夕バコとかメガネとか)
②デザイン的はイメージアップ、バリエーションアップ(付加価値を高める)
③胸が透き通って見えるのを防ぐ
④子供の場合は、ポケットに「夢」を入れる、というメルヘンの世界
⑤病人や、入院患者にとっては、パジャマは生活着。だから通常の服のポケットと同じ用途となる。
等々である。特に⑤の「わけ」は説得力がある。
 なるほどナ……。「夜、寝るときに着るもの」という思い込みが「ムダ」と思わせた。
よく確認すると、それなりの理由があったということである。
 今あること、今起こっている現象、必ず「わけ」がある。
その「わけ」をしっかり掴むことが、しっかりした対策に繋がる。その「わけ」をしっかり掴まない
と全てのパジャマのポケットをとってしまう対策になってしまう。

75.不愉快な距離

 ちょっとした実験があった。待ち合わせをしている女性に、だんだん近づいていって、どこまで距
離をつめると、彼女は位置をづらすだろうかという読みである。
周辺の混雑の状況とか、近寄る人の風体によっても多少違ったデータになると思うが、その実験では、
2mぐらいまでだと、位置をづらすということはしなかった。
 相手かまわず、1mまで、接近すると、少しづつ位置をづらすという行動があった。
A嬢だけでなく、B嬢もほぼ同じであった。
 人のまばらな電車の座席でも、ある距離まで近づくと、位置をづらしたり、席を立ったりする現象
がみられた。相思相愛の二人は別として、通常、自己防衛ゾーンというか、不愉快な接近距離という
か、そんなものがあるようである。これは動物の本能的な行動を示すものかも知れない。
 にもかかわらず、工程の場では、共同作業とか、干渉だとか、つぱめが電線に列をなしているよう
な(肩が触れる様な)工程が見受けられる。
 人間だから気分の悪いときもある。不愉快な距離にならないような配慮が必要である。
なかでも、必ず接近しなければならない共同作業は、距離にプラスしてタイミングがあり、イライラ
作業の最たるものと考える。この不愉快な距離を、1日中とらせているとすると、罪は深い。

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