物づくりの小話し、あれこれ(著者 小林弘司様)41~50
41.スポット改善とスルーの改善
ある工場の、あるショップの仕組み改善をしたとしよう。それを維持したり、崩したりするのは、
そのショップの力であるが、他ショップヘの影響が少ないので崩れ行<ケースがある。
ところが、素材から完成品までスルーで仕組み改善してお<と、1つのショップが崩そうとしても、
全ショップ生産できなくなるので、そう簡単には崩せない。
手間はかかるが、仕組み改善はスルーで進めたい。またそうすることが、全体の成果につながる。
42.4つの物の状態
物の4つの状態とは、加工されているか、検査されているか、運搬されているか、停滞しているか
である。改善とはこの4つの総和(リードタイム)に対し、加工の比率を上げることである。
43.集合方式とりリーフ作業
現在の条件下では、改善も、かなりの部分しつくした。混流するには、いれ込む技術が無い。あっ
たとしても設投が大き<採算あわない。あるいは型替え時間も大きすぎる。
検討し尽くした結果が集合方式であって欲しい。安易に集合方式に流されると、本来の改善のニーズ
が薄れてしまうことがある。(仕組みができたところで、安心する)
リリーフマンが、理想のリリーフをしたとしても、7割程度の仕事の効率である。
そのリリーフ作業を無くして、はじめて、集合方式の成果がでる。
44.少数精鋭から多数精鋭へ
少数に選ばれた人はよいが、その他の人は、自業自得ということか?
いつの時代も、競争社会のなかでは、さけられない宿命とはいえ、人を減らすときや、人の効率を求
めるとき、かならず引き合いに出される言葉である。
(多数精鋭の努力を過去にどれだけしたかも忘れて……。)
多数精鋭となる教育、訓練をしっかりやり、実績もあげて、少数精鋭という言葉が出ない集団にしな
ければならない。
45.元肥のまき方
百姓仕事をしている人から、聞いた話である。
田に撒く元肥は、稲のまだ植えていない田にまず撒き、稲の成長にあわして、分割して撒くというの
が本来のやり方らしい。ところが、稲が生えてくると、元肥の撒く手間が随分かかってしまうので、
できるだけ、稲のない状態の時に、一度に多めに撒いておこうと考える横着者がいた。
生産でいえば、ロット作業である。
例年であれば、それでも、収穫量の差もなくできていたらしいが、今年の夏は、異常な暑さで、雨
も降らない、そして長い夏であった。その異常気象のために、元肥をロットで撒いていた田は、稲が
枯れて全滅した。手間でも、成長にあわせて、元肥を撒いていた田は、例年と差なく、収穫した。
ここにも、ロット生産と一個づくりの差の教訓がある。
46.渡り鳥と島渡り
端数工数やアイドルが出る、島工程の作業のやり方を表現したものである。
渡り鳥は、一旦目的地へ着くと、しばらくそこで滞在し、暮らせるだけ暮らし(生産できるだけ、生
産し)、暮らせなくなると(生産するものが無くなると)次の目的地へ飛んでいく。
午前中はAゾーンで仕事をし、午後はBゾーンで仕事をし、あとはアイドルが発生している。
定時の枠のなかで、生産しようとする意図はない。
島渡りというのは、定時の枠のなかで、A島、B島、C島、D島をどのような頻度で、どのような、
コースで、島を渡っていくか(生産するか)をきめている。
渡り鳥は、生産の場ではいらない、鳥の世界だけでよい。
47.リカオンの子育て
リカオンというのは、体はそんなに大きくないのに、集団の力で、もっとおおきな獰猛な動物でも、
襲うことがある。そのリカオンの子育てが変わっている。
リカオンは数匹の雄と、数匹のメスでグループを構成する。
その数匹のメスに、序列があって、今一番強いメスをAとし、その次をB、一番弱いメスをCとして
おく。繁殖期となり、それぞれ子供を産むことになった。
ところがである。Bが産んだ子供を、Aが自分の子供もいるほら穴に運びこんだ。Bは自分の子供を
とられたかたちになるので、抵抗するが、何ともならない。
乳も張ってくるし、母性本能もあるので、何回か穴から、自分の子供を引きだそうとするが、Aによ
って虚しい抵抗となる。その内乳も出なくなる。Cも子供を産んでいたら同じ運命である。
一方、Aは、自分の子供と、Bの子供を育てるが、必ず自分の子供から、乳を与える。
食物が豊富な時は、Bの子供も育つが、食物が少ない時は、Aの子供だけは、生き延びて、Bの子供
は痩せ細ってついには死を迎える。強い子孫を残す、摂理とはいえ、凄い子育てである。
リカオンの子育て程の壮絶さはなくても、人を育てることには、それなりの努力と工夫、投資(犠
牲)がいるものであり、それが企業の発展、存続につながっていく。
48.1:100
改善班に、搬送機に小自動を組合せた移裁装置をつくるように指示した。
「こう押し出して、ここで止めて、半回転させてから、こんなふうに、引っぱり込んだら」といった
そうすると、「口で言うと、数分やけど、作る方は、1カ月仕事や」といったようなニュアンスの
発言があった。指示する人はいいな。口でいうたらええだけや。
そんな風にうけとめられたのだろうか?その話しをなんとなく、上司に話すと、
君の部下が100人いたとすると、一人に1つの事を指示しても、100日かかる。
その人にとっては、「口で言うと、数分やけど」ということになるのだろうけれど、1:100であ
るから、それでいいんだ。といってもらった。少し気が楽になった。
この1:100の話は、部下として心しておく必要がある。課長でもこんな比なのだから、役員や
社長は、凄い比である。だから個別で受けた、ちょっとした指示でも、反応して仕事を推進するよう
にしないといけない。
49.コーヒーと水
コーヒーを注文すると、必ず水がでてくる。
これは、コーヒーを飲んだあと、水を口に含み、舌を洗って、毎回新しいコーヒーの味覚を味わうた
めであるらしい。
私達の仕事も慣れてくると、マンネリ化して、新しい感覚を失ってしまうことがある。
コーヒーの間にはさむ、水の役割りをするのが自主研だと思っている。
メンバーは、他の職場の課題こ取り組み、新しい感性をみがく。更にそれが他社での改善となると、
心よい緊張感もともない、自社の、自分の、レベルを認識することにもなる。
50.「へたくそ」な訓練
1人工を与えきれないで、0.7人工程度の仕事量のままで放置していたり、手順や動作のムダを
黙認していると、「へたくそ」な訓練を続けていることになる。
1ケ月も、その状態が続くと「へたくそ」な訓練が身についてしまって、あるべき標準作業(ムダな
手順もなく、標準手持ちが決まっており、タクト内にきっちりおさまる)についてこれなくなる。
改善して、手待ちを増やした状態で放置しておくと、これまた、「へたくそ」な訓練をしていること
になる。
ゴルフと同じで、まちがったかたちでい<ら練習しても、上手くならない。悪いくせがつくだけであ
る。プロになると、悪いフォームになると、やみくもに練習するのではなく、確かな人に、コーチし
てもらって矯正する。「へたくそ」な訓練にならないようにしているのである。
私達のゴルフは遊びなので、「へたくそ」な訓練もご愛嬌であるが、仕事では「へたくそ」な訓練
にならないよう注意しなければならない。