著者: エイム研究所 矢野 弘
それぞれの会社は独自のユニホームを持っています。ユニホームは仕事をする上での
作業着になっていて、そのユニホームには大切な意味があります。
自分が意識している以上に、特に他の会社の人は観察するように見ています。
会社の名前やマーク、着こなしや身ぶりそぶりを見られています。
会社の名前が分かるので会話まで先入観を持って聞かれてしまいます。
会社の中だけで着ていれば社外の目はないのですが、
通勤や出張で着たままだと会社の看板が歩いていることになります。
ユニホームが仕事着である以上、仕事をする上での意味があります。
ユニホームの意味《機動性、安全性、所属性》
ユニホームだからといって汚れて当たり前とか、破れて当たり前などと粗末にしてはいけません。犠牲になって守ってくれているのです。毎日お礼を言って感謝しなければいけないくらい大切な物です。
1.機動性
(1)行動のための機能
人は仕事の内容でいろいろな道具を使いますが、その中で体全体を包むユニホームが最も行動に影響を与えます。
裸や裸に近い姿で作業するのはお風呂か水泳くらいです。何も着けていないので束縛されず最も動きやすいと思うかもしれません。では普段の仕事を裸ですると恥ずかしさだけでなく、五感がむき出しになり敏感過ぎ、気になって判断が遅くなることがあります。
ユニホームを着るということは裸に比べると体を束縛することになります。例えば、汗で肌と服とがくっつき動きを鈍くします。また服の抵抗で動きの速さが遅くなるように感じます。
ところが、ユニホームや保護具のおかげで部分的に余分な五感の一部を鈍感にでき、守られている安心感から判断が早くなり、さらに大胆に動作できます。必要な感覚をより分けて作業できるようにする機能なのです。
● 例えば、野球のユニホームの機能を見てみましょう。
特に、キャッチャーがもっとも多くの物を身に着けます。ピッチャーが投げるボールに対しての保護具やバッターが打ち損なって来る打球からの保護でグロー ブ、ヘルメット、マスク、プロテクター、レガース、局部を守るカップがあります。もし、これらを着けていないと、痛い思いもするし当然けがをします。
着こなしを確かなものにすると、道具を信じて思い切った行動ができます。一見、安全のためだけにあるように思いますが、それぞれの形は動きを制約しないように機動性を重視して設計されています。
上下のユニホームそのものも、スライディングなど思い切ったプレーをしても体が擦りむけないように、破けにくく摩擦に強い材質です。スパイクを履くこと で、地面をつかんで加速・減速や曲がりを思い切ってできるようになり、機動性がより高くなります。ベルトも適度に締めることで、ピッチングやバッティング でインパクトの瞬間に力を入れることができます。
プロ野球選手の着こなしは、職業として格好良く着こなしています。誰もふしだらな格好をしていません。保護具も含めて着こなしが悪いと、格好悪く見え不安に感じます。格好良く着こなしている選手は、やはり良いプレーをします。遠くから見ても着こなしで分かります。
プロスポーツでは、行動そのものが感動を与える商品になっています。着こなしからくる機動性は、行動結果に大きく影響を与えます。
ユニホームが汚れるということは、体が守られている証拠です。いつも同じ所が汚れる場合は、いつも同じ物が当たっていることになります。当たっているという ことは動作に阻害要因があるということです。ムリな姿勢をしている証拠です。そのままにしているとムリから疲労して、ムラな作業になり、ミスが発生して不 良や事故が発生し、ムダになっていきます。
汚れっ放しは問題ということです。汚れるということは、問題点を「表(おもて)」に現している信号で、改善個所と内容を教えてくれている機能になります。
汚れているから汚いと洗濯を繰り返し、きれいになったと喜んではいけません。これは問題点の証拠隠滅で、「私は改善をしません」と言っているようなもので す。改善して汚れないようにすることが「善い行い」で、そのためにはユニホームは汚れが目立つようにするのが良い性能になります。汚れが目立たないデザイ ンは「隠す管理」との印象を与えるでしょう。