売値・原価・利益の関係

著者: エイム研究所 矢野 弘

売値,原価,利益の関係は次の6通りがあります。

① 原価+利益=売値
② 売値-原価=利益
③ 売値-利益=原価
④     利益=売値-原価
⑤     売値=原価+利益
⑥     原価=売値-利益

 

<原価+利益=売値>
 この式は、仕入先の営業が注文に対して見積もりをするときに、この意識になる。いわゆる原価の積み上げで「材料費がいくらで、工数がいくらかかってレートを掛けて、設備償却費がなんぼで一般管理費が・・・などなど、そして利益を2割ほど先ず吹っ掛けてと・・・」と見積書を作成し交渉に挑む値段をはじき出す。

 

実際には各項目にはトラブルを加味してのサバがそれぞれ心理的に入っているので、少々値引かれても本当の原価がばれないよう、お客の前で動揺せず三味線を弾けるようにしてある。
 この見積もりを持ってお客さんと交渉し渋い困った顔をして、1~2割でも引くとお客も交渉力があると思い顔が立つので共に笑顔を迎える。こんなことを想像しながら見積もりをしている意識である。
どちらかといえば売り手市場の状態のときやライバルがいなく高く売れるときの場合に多く、買い手市場でも営業の手腕を発揮する場合の意識でもある。どちらにしても売る側はできるだけ高く買って欲しい。

 

<売値-原価=利益>
 この式は、見積もりを持ってお客さんと交渉中の仕入れ先の意識になる。お客さんは「○○○円で買いたい」と売り値を要求してくる。仕入れ先は頭の中で原価を差引いて「利益はこれだけしか出ないなぁ」と計算して心の中で困っている状態である。

 

顧客満足度向上とスローガンを上げている会社はこの式を全面に掲げている。たしかに市場価格が先に決まっていて、原価が高ければ「利益は少ないぞ」と言い聞かすためにはこの式の意識が必要である。

 市場原理にはまっていて競争状態のときの商品は当然この式になるので、市場から撤退しないかぎり続く。反省を促し危機意識をもつためには、この式は欠かせないので経営トップの意識と口調はこの式になって下さい。

 

<売値-利益=原価>
この式は、すでに生産をしていてコストダウン目標を立てるときにこの意識になる。売値は決まっていて、これだけ利益を得たいということで原価をいくらでつくらなければならないかを求めるときにこの意識になる。

 原価低減活動を促すときにこの意識になる。一旦価格が決まっても市場価格やお客の値引き要求は生産後でも容赦なくやってくる。つまり、利益(自分たちの給料)を確保し続けるには一過性の原価低減でなく活動として取り組む必要があるため、取り組むメンバーはこの意識にならなければならない。ボトムアップ的活動ともいえる。

 

②式(売値-原価=利益)の後に、この意識にならないと行動に結び付かない。これがうまく活動し続けると業界でのプライスリーダーになり、得た利益でお客に満足して頂くサーピスに投資できるようになる。そしてより売れて量産効果でさらに原価低減ができ、良い循環が形成できる。

 

<利益=売値-原価>
この式は、社長以下トップが「これだけ利益を上げたい」という先に目標を掲げた時の状態である。まだ何を売るかがはっきりしていない状態である。各メンバーは予定売値や原価企画をして目標の利益を確保する商品企画・構成をしていかなければならない。

 商品企画・構成では売れ筋と死に筋を市場調査し、死に筋は売るのをやめて売れ筋を絞り振るいに掛けていく。生産段階では、いかに安く仕入れたりつくったりする調達・生産の準備をし、販売では市場へルートと印象づけの企画活動をしていく。

 

これは先制攻撃でまだ他の競争相手小さいか、いない場合にこの意識で活動する。これは各段階での企画(課題の設定と人選)が重要になる。目標としている効果が明確であり見返りもハッキリしガイドラインさえ明確にしておけば、メンバーは自発的に行動する。 しかし経営者は各段階で発生する資金の調達に右往左往することでしょう。

 

<売値=原価+利益>
 この式は、お客さんと仕入れ先が商談している時の、お客さん側の意識である。買う側は仕入先の売値を予測してくるが『この値段で売ってくれ』『この値段ならは買う』と仕入先の都合(原価・利益)など関係なく買い値を決めてくる。

 この時の仕入先の意識は②式(売値-原価=利益)の状態になり利益がいくら残るか心の中で不安げに計算する。しかし買う側も価格折衝の時に「これぐらい原価低減したならばこれぐらい利益は出せるだろう」と挑んでくるため一旦決めた買い値は動かない。

 

仕入先がうまく三味線を引けたなら⑤(売値=原価+利益)と①式(原価+利益=売値)の意識のぶつかり合いであるが、お客さんが上手ならば⑤(売値=原価+利益)と②(売値-原価=利益)の意識のぶつかり合いになる。それと、お客さんといってもお客さんの後には、そのまたお客さんがいるためお客さんの中では仕入れ(調達)をしているようなものである。利益を生むための原価低減活動をしている姿の意識である。

 

<原価=売値-利益>
この式は、先に原価が決まるという状態である。つまり開発とか試作が行われもし量産になると、この値段(原価)になってしまうという状態である。つまりいくらで売れるのか、どれくらい利益が出るのかまだわからない状態である。

 マーケット調査して商品企画して価値的売値を決めて開発したのではなく、遊び心や将来を予測して技術開発し、実用段階に入って原価計算をしてみた状態である。製品にはなったが商品として売れるのかどうか不明な状態である。研究発表会場などで聴取者からの質問で「いくらするの?」と質問があると開発者が「○○万円です!」と答えた値段である。

 

値段を聞いた視聴者は『え~!』というが、開発者は『これぐらいの値段しますよ』と言いかえす。早く商品化したいが買い手しだいで、『すごくほしい』と高く買ってくれるお客さんが現われれば利益はでるし、いくら安くできてもお客が見向きもしないならば利益を生まない。



 何番目の式が良いのかを言っているのではなく、場面々々、立場々々でこれを使い分けることが善いのである。これを使い間違えると売る側の勝手な値段付けや買う側の容赦ない値引き攻勢ということになってくる。

 

世間一般では、②式(売値-原価=利益)がマーケットイン的でもてはやされているがこれだけではいけない。着目して頂きたいのは式の中の +,-,=の記号である。『+』は売る側または買う側の片方の都合で発生する意識で、『-』は両者が向き合った時や上司,部下が一丸となる時にこの記号は発生する。

 『=』は活動の開始点で『=』の左側が決まると右側を求める活動に移る。高く売れる時に売り逃げや押し売りをしたいのか、涙をのんで妥協したいのか、原価低減活動をしたいのか、市場開拓したいのか、自分だけ儲けたいのか、夢を見て開発をしたいのか、志しの分岐点である。

 

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