物づくりの小話し、あれこれ 31~40

物づくりの小話し、あれこれ(著者 小林弘司様)31~40

31.子豚の乳のみ

 豚は一度に、10匹ほどの子供を生む。順番に生まれてきた子豚は、本能で母親のお乳をさがし、
吸い付いていく。乳の出は、母豚の頭側が勢いがよく、しっぽ側ほど、出が悪いらしい。
したがって、どうしても頭例の乳首を求めて争う。
しかし、もう一つの特性があって、吸いはじめて何十秒間は勢いがあるが、直ぐに出が悪くなるとい
うのである。争っているうちに、せっかくのお乳が出てこなくて、飲めないことがおこる。
それを承知しているので、その内それぞれの子豚が、自分の吸う乳首を決める。
いくら早く、母豚に接近しても、自分のその常席へ位置するのである。
 子豚は、標準作業が一番効率のよい方法であることを知っている。

32.試験の問題、順序と補充

 ものの造り方は2つ。順序と補充である。
順序は、試験の時に、前もって問題が判っているようなもので、日頃の勉強は楽で、個々の試験の
成績は良いが、実力はサッパリつかない。
補充は、試験の時に、何が出るか問題が一切判らず、全ての範囲について、勉強しておく必要がある。
試験の度に応用問題で鍛えられるため、実力はどんどん向上する。
便利だからといって、順序での、もの造りばかりしていると、売れの速さと関係のないところとなる
ばかりではなく、力を弱めることにもなる。
JITは、後補充といいかえてもよい。

33.改善マンの条件

 問題点(ムダ)を見つける能力、見つけたムダを排除していく能力の2つが揃って改善マンである。
いろいろな仕組みは判っているが、流れを造っていけないというのは、改善マンとしては×である。
動機づけや、期待値(目標)だけを与えて、自ら、方策を示さず、手も汚さないというのも、上記と
同じで、管理者として×である。

34.くるくる寿司

 仕入先へ、午後一番に入るために、途中で食事をした。うどんや定食もの、それにくるくる寿司を
している大衆食堂である。
ここで、おもしろいことを経験した。入るなり、こちらへどうぞと席を進められた。広い場所がある
のに、なぜ片側ばかりに客をよせるのだろうと思った。         .
がしばらくすると、すぐにその訳がのみこめた。
くるくるまわっているコンペァ上に切替えシャッターをつけてショートサーキットしたのである。
しかも、皿のピッチもかえ、お客の引きにあわせたのである。
 当然、寿司をにぎっている人も半数抜けて、他の片付けなどの仕事をはじめた。要はリードタイム
を短縮し、仕掛かりを少な<、しかも新鮮度を維持したのである。
 そのあと、もっともっとそんなことには、熱心なはずの、物づくりをしている会社が、大ロットで
在庫をもっている様をみると、寂しくなった。おっさんにまけているのである。

35.爪楊枝いれから教わること

 爪楊枝がきれたので、詰め替えることにした。何度も入れ替えるのが、邪魔くさいので、おもいき
りつめるだけつめた。そうすると微動もしないから、とんと出ない。
 すこし数をへらしたが、それでも何度も振らないと出てこない。ちょうどよい程度に出そうと思う
とかなりの空きが必要だ。
このようすから、在庫は一杯あるのに、必要なものがないという状況を連想した。

36.てんとう虫のこだわり
 てんとう虫には、おかしな習性がある。飛び立つとき、必ず一番高い枝の先端から飛ぷのである。
枝を伝って行って、届く範囲ならまた別の枝に移り、必ず一番高い枝の先端から飛ぷ。
そのこだわりは見事である。
 われわれの仕事のなかに、難しい制約条件があると、つい途中で飛び出してしまう(投げ出してし
まう)ことがないか。やれることより、やるべきことへの挑戦ということはよ<教わる。
やるべきことには、難しい課題が多い。それをやりきるには、こだわりが非常に大事な鍵のようにお
もえる。てんとう虫のこだわりは本能ではあるが、そのひたむきさは学びたいところである。

37.にわとりとエサの選別

 にわとりは、食べられるものと、食べられないものをうまく選別する。
食べられない、小石や、穀物の皮などは、くちばしで、ポィと横へ跳ね飛ばす。
不良品を次工程(後工程)へ流出させている作業を見て、にわとりですら、選別できるのに、人間が
不良品を流出させているのは、とんでもないことだ……。
その戒めに、引き合いにだされた話しである。
 にわとりは、しょせん選別までだが、人間は、選別しなくてもよいような、真因にせまり、対策す
ることができる。

38.つかわれ上手

  「たんす、ながもち、あの子が欲しい」「この子がほしい」、数人の子供が2つのチームに分れて
相手側の子供のなかから、自分のチームに引き込みたい子供を選ぶ他愛もない、昔の選びである。
その時、かわいい子供や、力の強い子供が先に選ばれる。
そんなことが、フロジエクトでチームを編成するときに再現された。
15名の人を3チームに分ける必要があった。それぞれのリーダーに、欲しい人を順番にとりあえず
指名して下さい。その後、調整しますのでと、切りだした。
  15名のうち、1人、よく仕事ができる男がいた。こちらから、見ると一番先に指名されると思っ
ていた。
1廻りしても、2廻りしても、彼の名はあがらなかった。やっと最後の方で出てきた。
「仕事はできる」のになぜ一番に指名されなかったのだろうか?
心の底までは、のぞけないが、概ねこのようなことであったらしい。
  「仕事はできる」が使いにくい。チームワークがとりにくい。下手をすると、リーダーの影が薄く
なる。……というのである。
リーダーの度量によって、この人の活用度は変わってくる。
また、この人はこの人で、使われ上手にならないといけない。むつかしいものである。
「仕事はよくでき」「しかも使われ上手」そうありたいものである。

39.ヤツター・マン

 なんでも、かんでも、俺がやった。それもまた俺がやった。
これをヤツターマンという。
企業活動のなかで、そうそう一人で成果を出すようなものは少ない。ひどい話になると、自分の担当
した部門の人数を倍にして、大きくし、盤石の体制をつくった。等と自慢する。
半数にして、同じ成果を出した、またはさらに大きい、アウトプットを出したのなら、大いに自慢し
てもらってもよいのであるが……。
自慢話は知恵の行き詰まり。こころしたいところである。

40.たまたまとまたまた

 たまたま、きようは不良がでまして……。たまたま、設備が故障していまして……。いつもは順調
なんですが、たまたま不都合がかさなりまして……。
「たまたま」ということは、言い訳の枕言葉のように、使われることがある。
しかし、「たまたま」という現象は、「またまた」の方が多い場合がある。
また本当に「たまたま」であったとしたら、それは、「またまた」に変わる、危険信号である。
TPS(トヨタ プロダクション システム)に「たまたま」という用語はない。

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